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人生に乾杯!


 
  お嬢さん・・・。すまないが誰にも見つからないように、この袋に有り金全部を入れてくれないかね? いや、これが見えないか(ビニール袋から拳銃が)? 緊張するのはわかる、わしも初めてなんだ。
  
  
 ・・・ハンガリーの小さな郵便局のカウンターで、客の誰にも気づかれずに白昼堂々、銀行強盗に成功したのは81歳のエミル。妻ヘディと二人きりで、破綻寸前の年金生活を慎ましく送る老人。
 
 家賃も滞納し立ち退きを迫られ、電気も止められました。もっとも、滞納した家賃は年金月額の倍以上と、挽回不可能な現実。かつての共産圏時代と違って、もう年金だけじゃホントに暮らせないのです。
 
 売れる物は売り払いました。それでもヘディが手放せなかったのは、二人の、そして彼女の人生を大きく変えた思い出のイヤリング。方やエミルにはもう何年も動かしていない愛車ウインドバード(超クラシックカーの58年製チャイカの愛称。ハンガリー共産党高官の運転手であった彼へのソ連の払い下げ。ダッシューボードに置き忘れた拳銃のおまけつきで)。
 
 立ち退きを迫る執行官に、ヘディがイヤリングを外して渡したとき、エミルの胸にある決意が生まれます。
 
 
 家には戻らず、たちまち2件の強盗を成功させたエミル。もっとも成功の原因はあまりに無警戒なその風貌と振る舞いか。防犯カメラにも無防備に顔をさらし、あんな目立つ車での移動。しかも、丁寧な言葉使いの「紳士的な」強盗。ニュースにも取り上げられ、たちまち警察がヘディの待つ家に。
 
「奥さん・・・。お気持ちはわかります。だけど、貴女の人生の伴侶にこれ以上罪を重ねさせてはいけません」
「・・・人生の・・・、伴侶」
 ケータイなどもちろん持たない二人。深夜にエミルから電話があり、早朝に鉱山で落ち合うことに。
 
 再開し、固く抱き合う二人。互いを想っての行動が、二人を再び結びつけます。出会った頃のように・・・(※)。
  ※モノクロの回想シーンで、二人の劇的な出会いが描かれていますが、あえて割愛
 
 見張っていた若い警官たちを振り切り、颯爽と走り出す愛車ウインドバード! ハネムーンのような甘い雰囲気さえ漂わせながら、老いたボニー&クライドの「紳士的な」強盗旅行の始まりです。
  
 被害者にさえなんとなく好感を抱かせる二人の活躍(?)は、やがて国中の話題に。
 
「オレは好きだぜ。今まで我慢してきたんだ。最後くらいぶちかませばいい」と応援するいかつい兄ちゃん。
「年金だけじゃ食べていけないもの。仕方ないと思うわ」と語る中年女性。
 破綻財政に苦しむ市民たちから意外な共感を集めながら、 かつて共産党高官のドライバーだったハミルは、ヘディと力を合わせて、追っ手をかわし続けます。
 
 どこへ? 何のために?
 
 次第に厳しくなる警察の包囲網。ある意味、本家よりはるかに刹那的なハンガリーの老ボニー&クライドに果たして明日はあるのか?


 

 えー、これはいい映画です。私の好きな大人の友人達にはぜひ見てもらいたい、一本です。
 正直、それほど期待はしておらず、お手軽なコメディ仕立ての一本で束の間幸せになれれば、と手に取ったのですが、大アタリでした。
 
 パッケージもコピーも甘口なのですが、本編はけっこうビターな味わい。見終わって調べたのですが、共産圏が崩壊し資本主義の入ったハンガリーの現実って、けっこう悲惨とのこと。作中のニュース番組では「二人の行動が、高齢者問題に目を向けさせた価値がある」旨のナレーションが入りますが、本国での大ヒットは二人が義賊として喝采を浴びたのでしょうか。
 
 主要な登場人物に「イヤなヤツ」は殆どいません。何より、主人公の老夫婦はとっても愛しくて。
 
 だからこそ、これだけのことをしでかしてタダではすまないこと、ハッピーエンドなど望めそうにないことと併せて、誰も傷つかないラストを願いながら、ハラハラしながら見守り続けるしかありませんでした。
 
 近所のツタヤでは、以前「人間ドラマ」のコーナーに置いてありましたが、借りた時には「コメディ」に移されていました。もっとも、「次に何が起こるかわからない」という意味では立派な「アクション映画」でもあります。
 
 笑いましたし、苦い想いも感じましたし、とってもハラハラするし、最後は泣いてしまいました。
 
 
 これはいい映画です。私の好きな大人の友人達にはぜひ見てもらいたい、一本です。
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コメント

非公開コメント

No title

ベルリンの壁崩壊後の東独映画...ったって、C・シュリンゲンズィーフ等の作品ですが...は結構観ましたが、ハンガリーの世相を描いた作品は未見でした。
老ボニー&クライドという事ですが...本家のようにエンディングを向けてしまうのか、何処か救いが有るのかも興味深いところですね。
機会が有ったら是非観てみたいと思います。
凹。

No title

悪人さん、いつもありがとうございます。エンディングはけっこう頑張ってくれてます。見た人によっては賛否両論らしいですが、私は賛成。よかったら、一度ご覧になってくださいね。いい映画ですよ。