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レスラー


 
 ランディは、80年代に大活躍したプロレスラー。チャンプだったときには、中東キャラの悪役「ジ・アヤトラー」とのビッグマッチでMSGを満パイにさせ、15万人がPPVで見たという栄光も。
 
 もっとも、それは20年も前の話。
 
 当時の対戦相手のアヤトラーは、この商売に見切りをつけて中古車販売で稼いでるというのに、ランディはメジャー団体からとっくにお払い箱になった今も、プロレスにしがみついています。
 
 過去の人であっても、昔の名前のおかげで独立系の小さな団体のドサまわりではメインイベンター。ランディのおかげで、小さな会場は埋まるのですから、レスラー仲間からも一目置かれています。
 
 でも実際、それだけじゃ食えなくて、鉄条網やガラス片で血まみれになるデスマッチもやるし(昔はそんなもん食いつめた連中の見世物だとバカにしていたのに)、トレーラーハウスの家賃にも事欠き、スーパーマーケットでアルバイトしている現実。
 
 一人暮らしで、娘とはもう10数年も音信不通(妻にいたっては描写すらない)。唯一の親しい人物は、ストリッパーのキャシディ。もっとも、客との一線は決して越えようとしない彼女の微笑みはどこまでプライベートな親密さがあるかは頼りなくて。
 
 ランディの本名はロビン。でも決して本名では呼ばせません。現実は辛すぎて、栄光&虚構の世界でのリングネーム「ランディ・“ザ・ラム”・ロビンソン」こそが自分の存在を認めてくれているのですから。
 
 正直、この稼業が限界なのは自分だって知っています。かつてのリングのヒーローは老眼鏡が手離せず、人前にさらす体を維持してきたステロイドの副作用で心臓はもう持たず、医者からは引退を勧告されているのですから。

 もう・・・潮時なのか。 20年以上リングでファンのために体を張ってきたオレだって、そりゃ命は惜しいさ。
 
 だけど、ランディには何もありません。家族も、友人も、カネも、仕事も。あるのは思い出と孤独だけ。
 
 ストリッパーのキャシディ。暗く派手な舞台では美しい彼女ですが、実はそう若くないだろうことは知っています。自分同様、もう一線で扱ってもらえていない辛い立場も。
 
 彼女に救いを求め、やっと店の外で会えることに。離れ離れの娘との復縁にアドヴァイスをもらい、初めてカネをとらないキスも。
 
 でも、それが限界。
 
 娘との復縁は自らのルーズさでご破算になり、スーパーのバイトもヤケを起こして辞めてしまった。 全て自分のせいなのだ。栄光も、悲惨も。
 
 かわいそうなランディ。いや、ロビン。 現実で行き場を失くした彼は、再びリングへと向かいます。死ぬために? 生きるために?
 
 
 
 主演のミッキー・ロークの実人生と重ね合わせての大絶賛だった映画、とのこと。そういうことは全く知らずに借りてきました。
 
 私自身、80年代にプロレスの大ファンだったので、控え室での(試合の)台本の打ち合わせや、こっそりカッターで額を傷つける流血、痛み止めとステロイド漬けのレスラーといったあからさまな内幕描写には少々びっくり。
 
 ミッキー・ロークさん自身、けっこうレスラーとしてサマにもなっていて、リアルにできていました。 善玉も悪役も控え室では巡業の同業者として仲良くやっていたりする描写も暖かくてよかったなー。

 レスラー稼業だの、ミッキー・ロークとのシンクロといったことよりも、職場と実生活のギャップ&リタイア後の孤独という点で、これは誰にも重なる話として見てしまいました。
 
 職場では某かの役割があり、それをこなすことで、その社会での地位や敬意を得られてはいても、あまり時間を割けなかった家庭や地域社会での居場所のなさ。
 
 この映画はお話ですから、主人公がどのように散ろうとも美しい。でも、自分の現実はどうするの? ランディから学ぶのは、そのルーズさ。彼を反面教師に私自身の実人生を闘っていきましょうか。

 映画そのものの意図とは違うかもしれませんが、感情移入もできず、苦い想いで見終わりました。
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