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ディン・Q・レ展 明日への記憶/広島市現代美術館



 ベトナム人アーティスト、ディン・Q・レさん。
 
 それにしても、広島市現代美術館は硬派な展示が多いです。今回は外相サミットと重なる期間というのもあったのか、なかったのか。まぁ、そんなもんわかりませんが。
 


 
 ベトナム戦争、がテーマです。
 
 重いなぁ。たまにはここで軽やかなものも見たいのですが。
 
 
 ディン・Q・レさんは68年生まれだそうなので、4歳の頃に戦争が始まったのでしょうか。家族とともにアメリカに渡って成人。アメリカ国内の反戦論議も終戦の大きな要素だったことを思うと、表現者・創作者としても非常に複雑な時間を過ごされたのでしょう。
 
 
 ベトナム戦争そのものについて何か記すことは控えます。一度あれこれと書いてみたものの、浅く薄っぺらすぎて。
 

 壁一面を埋め尽くすポスター風の作品。
 
 「ベトナム人死者200万人」「米兵死者5万8千人」「孤児になった子供30万人」「自殺した退役米兵6万人」「ロサンゼルスのホームレスの40%はベトナム帰還兵」「破滅はお互い様(カーター元大統領)」・・・。
 
 
 
 映像作品の多い展示で、どれも映画監督みたいに上手にできていました。もっとも、映画ではなく「映像作品」ですから、ひねったものばかりで。


 「父から子へ:通過儀礼」という作品。「プラトーン」「地獄の黙示録」という、ベトナム戦争を扱ったアメリカ映画を左右に並べた10分間の作品。
 
 「男は戦争に行ってナンボ」「父ちゃんもじいちゃんもやってきたんだ。戦争を経験してこそ男だ」なる空気への疑義、なのでしょうか。
 
 言われて気がつきましたが、この両作品の主演男優は本当の親子。ディン・Q・レさんは巧みにフィルムを再構成して、左右の作品が父と子の会話のように見せてきます。
 
 父は街に馴染めず、戦場に再び戻ってきた男。息子は家庭に反発した新兵。父がシニカルに見守る中、息子は人を殺め、殺め、やがて「自立」して行きました。
 
 
 アメリカで育ったベトナム人がつくったものです。戦慄し、二度見ました。
 
 
 


 簡素なヘリコプター。アートではなく実物、のようです。
 
 今度は3面で展開される作品。


  左にはベトナム戦争の象徴であるヘリコプターを語る老いたベトナム人。軍人としてヘリコプターと対峙した男性、無力な少女としてヘリコプターから逃げていた女性。空の彼方から編隊を組んで現れる悪魔たちの話をしてくれます。
 
 右の画面には戦後世代のベトナム人男性。簡素ながらも自力でヘリコプターを作って産業化し、祖国の農業や産業の発展に寄与したいと切々と語ります。
 
 そして中央には、銃撃・爆撃を繰り返す悪魔と、平和になったベトナムの空に飛び立とうとする簡素なものの姿。
 
 
 滑走路を必要としないヘリコプターは、ジャングルの多いこの地で兵器としても農民の仲間としても有用なのでしょう。
 
 簡素な、本当に簡素なヘリコプターはとても武器など積めそうにありませんでした。それでいいんだと、言うように。
 
 
 
 他にも色々とあったのですが、もう一度見に行くことにしましょう。



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コメント

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No title

はじめまして。現代美術館、よく訪れたものでした。理解しにくいもの、すぐ胸に飛び込んでくるもの、いろんな展示がありました。学生時代の思い出です。ちょっとした坂の上で、散歩にも良いですね。

No title

陽炎さん、こんにちは。はじめまして。コメントありがとうございます。

現代美術館は、ホント固いのが多くて。それはそれで立派なのですが、広島は柔らかいものが少なくて、ときどき息苦しいような気もします。

と言いながら、「帝国の境界II 西方公司」っていうのが面白かったので、よかったら過去記事を見ていただけたらうれしいです。