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メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬


 
 国境警備隊に追われながら、断崖を荒野を馬でアメリカからメキシコを目指す3人の男たち。
 
 一頭めは、老カウボーイのピート。心を許した友の遺体を埋葬するために、この旅を暴力で仕立てた男。
 
 二頭めは、手錠をかけられた年若い国境警備隊員マイク。ピートの友人を射殺してしまい、密かに埋葬した男。
 
 そして三頭め・・・。メキシコからアメリカへ不法入国していたカウボーイで、もう生きることをやめてしまった男。ピートとともに働き、誰とも知らずマイクの妻と寝て、誰とも知られずマイクに殺された男。・・・メルキアデス・エストラーダ。
 
 国境の小さな町は、寂しく、退屈な土地。クルマが馬になれば、そのまま100年前と同じ風景かもしれないくらい、時間に置き去りにされたような。
 
 それでも、国境を挟んだ川のどちらに生まれるかで、豊かさは全く違うものに。法を犯してでも職を求めて川を渡ってくるメキシコと、それを銃で阻止するアメリカ。もっとも、低賃金の不法移民なくしては成り立たない社会という現実も。
 
 華やかな街から赴任してきた国境警備隊員のマイクとその妻は、この土地の退屈さと仕事の味気無さから、ほどなく疎遠に。
 
 美しい妻は、町にひとつしかないドライブインの女主人にノセられて男遊びをはじめ、マイクは国境で移民への暴力を強めます。それは、とうとう無人の荒野で罪もないメルキアデスを撃ち殺すまでに。そして、マイクの手によって誰にも知られずに一度目の埋葬が。

 誰もが孤独です。マイクも、メルキアデスも、ピートも。そして、登場人物のすべてが。

 ほどなく見つかったメルキアデスの亡骸。不法移民の遺体は事務的に行政が改めて「二度目の」埋葬をしますが、友人の無残な最後にピートは怒りを抑えられません。
 
 やがて犯人と知ったマイクを有無を言わさず殴りつけ、銃を突きつけ、縛り上げて連れ出します。メルキアデスの亡骸を掘り起こさせ、生前に彼が言っていた「オレが死んだら、故郷ヒメネスに埋めてくれ」という望みをかなえる旅に出るために・・・。

 殺した男と、殺された男とともに。
 
 
 乾いた風景と、閉塞感に覆われた映画でした。数年前にも見たのですが、改めてその苦さを堪能した次第です。
 
 予告編で喧伝されていた「ただ、約束を守るために」と言うよりも、それまでの人生の大切な何かを賭けたような決死行。そして、孤独な友人の話していた楽園とは・・・。

 「ここが、ヒメネスだ」
 
 そうだ、苦い想いにいくらまみれても、楽園は、和解は、救済はあると思いたい。どんなにささやかなものであったとしても。
 
 重い手ごたえのある、好きな映画です。 
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