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リトル・ミス・サンシャイン


 
 カリフォルニアを目指して、一家を乗せたオンボロのワーゲンマイクロバスが走っている理由は2つ。
 
 1つは、挫折にまみれた一家のいまや唯一の希望と目的になった、6歳の娘オリーヴのミスコン出場。
 
 2つ目は、(元々そんなつもりはなかった&誰も口に出さないけれど)自分たちが寂しいひとりぼっちにならないために力を合わせること。
 
 ニューメキシコに住むフーヴァー一家は、傍目にはともかく、破産目前・子供の進路・厄介な舅・自殺未遂の親戚を一時預かり等々、けっこう深刻な問題を抱えています。
 
 ひょっとしたら、問題の種類は違えど大なり小なりどこの家庭でもあるのかもしれないのですが。

・父→売れもしない自己啓発プログラムの出版にやっきになっていますが、空回り気味。崖っぷち自覚ながら虚勢張りまくりのチキン野郎
・母→まともそうですが、家事も放棄気味。もう相当疲れてます。
・舅→やんちゃすぎ。下品すぎ。口悪い。ヘロインやりすぎで老人ホームより強制送還(!)。
・息子→空軍を夢見てるひきこもり15歳。思春期少年のメンドくささすべて体現中。「僕はみんなキライだ!」
・娘→ミスコンテスト優勝を夢見る、6歳のぽっちゃりガール。舅をコーチにダンスの特訓中。
・母の兄→危うい均衡の一家にとって、致命的闖入者。恋人(男性)と名誉をライバルに奪われ自殺未遂したばかりのナイーブなインテリ・ゲイ。
 
 正直、静かにしている時の空気は、口を開くと罵りあいが始まりそうだからって感じの家族。もっとも、静かになんてするはずのない舅のジイさんのおかげで、すぐに罵りあいは始まるのですが。
 
 そんな一家にとって、誰の敵でもないのは娘のオリーヴ。当たり前ながら無邪気です。そんな彼女がまさかの子供ミスコン出場権を得たので、800マイルも離れたカリフォルニアに向かうことに。
 
 もっとも、飛行機に乗るようなカネはないし、自殺未遂直後の「母の兄」を置いても行けず。消去法でオンボロのワーゲンマイクロバスによる強行軍に。
 
 幸福なロードムービーでは全くありません。娘以外のほぼ全員が致命的な挫折を味わいながら車は走ります。なんで、いちいち。
 
 しかもボロ車はぶっ壊れて、スタートのたびにいちいち全員で押してやらないと動かないハメに。

 ・・・でも、これがいいんだ。誰かのトラブル(&致命的挫折感)のたびに止まる車とファミリー。そして、好むと好まざるとに関わらず、みんなで力を合わせないとまた走り出せないっていう状況。いちいち一生懸命飛び乗る姿もコミカルで。
 
 繰り返します。各人クソッタレの心情下、今や唯一の希望&目的は6歳少女のミスコン出場に間に合うこと。もう、さんざんのトラブルで遅刻確定的なんだけど。
 
 みんな押せ! 走れ、オンボロワーゲン!  プードルみたいなつくりもんのお人形だらけの子供ミスコンに、やけくそ混じりで殴りこみだぁ!!!! 行け行け!行っちまえー!!!!!


 
 

 これは素敵でした。もうビターで、けなげで、それでも前向いて。
 
 次に何が起こるかわからないっていう点で、アクション映画でもありました。それが、こんなにドキドキするのは、予測不能というか、命綱があっさり切れるような、安全網のない展開で。それでもまた立ち上がざるを得ない選択のなさ(だって、簡単には死ねませんよ、実際。映画じゃあるまいし)で。
 
 ドラマですから誇張だらけではあるのですが、「それでも生きていかざるを得ない」やるせなさは実にリアルです。
 
 こういうのが好きなんですね。よくあるハリウッド映画は、「結局、主人公死なないじゃん」とか思って、ちっともハラハラしませんし、感情移入もしませんできません。安全地帯の中でのスリル、です。
 
 これは違った。ちょっとしたことで人生挫折の落とし穴はあちこちにあります。傷つきやすくなった世界ではなおのこと。
 
 見てよかったなー。オレも優しくなろうぜ。
 
 
 だってオレは、この映画に出てくるダメな連中にそっくりなんだから。
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