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無言館 遺された絵画展/呉市立美術館



 先週の日曜、旧海軍鎮守府を見学した後に見に行きました。徒歩で10分少々と近く、呉の住宅地と運動公園の間を抜けて。

 無言館。

 水上勉さんの息子さんである窪島誠一郎氏が長野でやっていらっしゃる美術館。

 普通の美術館と大きく異なるのは、作者がすべて故人=先の大戦で召集され、還ることが叶わなかった人たちであることです。

 さすがに長野は遠いのですが、隣町の呉に来てくれたのはありがたかった。姉と行ってきました。



 こちらは、作者の妹さんだそうです。大層可愛がっておられたそうなのですが、肺を患って25歳の若さでご逝去。それを海外の戦地で知った作者は半狂乱となって悲しんだとのこと。

 そして作者ご本人も28歳の若さで戦死・・・。



 28歳で妻子を残して亡くなられた別の方の作品。遺されたこの絵に、戦後の苦しい時期含めて子供を育て続けた奥様は励まされ続けたそうです。


 出征があと数日と迫った頃、妹さんをモデルに庭でデッサンを繰り返していた作者は23歳で戦死されたそうです。

 同じポーズを取り続ける事自体は難しかったそうなのですが、時間がない中での作者の必死さが伝わり、妹さんも頑張ったとか。



 柔らかい光の美しい絵です。絵画のみならず、詩作、唱歌と多才で兄弟の尊敬を集めていた作者は21歳で戦死。


 無言館のことを以前何かで読んだ折、作者たちが(当然ですが)若いが故に作品は未熟云々ということが書いてありました。

 否定的な意味だったのかどうか、覚えていないのですが、作者の青年たちは美術大学を卒業、または教鞭をとっていたり、企業の宣伝部でデザインを手がけていたりと、素人は一人もおりませんでした。

 「未熟」という言葉から、勝手にもっと稚拙なものを想像しておりました。恥ずかしい。

 費やした時間が結果的に多くはなかったため、技巧の練達の可能性を残していたという未熟さは否めないのでしょう。

 が、生の有限を強く意識した中で描かれたという点で、ほぼすべての作品が遺作の迫真を帯びていると思いながら見ていると、立っている地面がぐにゃりと歪んでしまうような、立っていられないような感覚を何度も覚えました。

 
 絵画作品だけでなく、彼らが故郷に宛てた葉書も展示されていました。達者なイラストを添えたもの、故郷の風景や家族を思うものの一方で、国を護るために命を投げ打つ覚悟も書かれておりました。

 自分ではどうすることもできない、現実、愛する者を護るためには兵となる以外の選択肢がない厳しい、本当に厳しい状況で、何ができるのか。

 彼らの中には、戦地で同僚と全く口を聞かなかった人もいたそうです。


 戦地に赴く前に描いた=遺された作品と、還るためにだけではなく、おそらく兵士として役割を果たすべく懸命に日々を生きることの苛烈さ。それは敵もまた人という矛盾も孕んでいて。


 大変なものを見ました。今も混乱したままです。とりあえず図録を買って、ときおり眺めております。



 外に出てみると、海自さんの町・呉はいいお天気でした。

 
 本当に、本当に、意に反した死を強制されることがこれからもありませんように。自衛官のみなさんが命を賭すようなことが起きませんように。


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