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ベルリン・天使の詩

ベルリン天使の詩

 天使はいるのです。

 大人の目には見えませんが。

 彼ら・彼女らはこの世の始まる前から存在し、人間を見守ってきました。辛い境遇の中でも希望を見出せたのも、死の淵で諦めかけても生を再び渇望できたのも、天使が寄り添い励ましの言葉を囁いてくれたからなのです。


 天使・ダミエルは今日も彼の務めを果たすべく空を舞い、アパートの一室を訪れ、地下鉄の車内を歩きます。彼の耳には人々の内なる声、年金生活者の嘆きも、交通事故で死にかけている男の怨嗟も、絶望にあえぐ男のつぶやきもみんな聴こえてきて。

 そしてそっと寄り添って短く囁き、再び顔をあげた人々を残して立ち去るのです。
 
 天使はダミエルだけではありません。そして絵に描かれるているような姿でもありません。4〜50代あたりに見える容姿と、きちんとした身なり。何十人もの男女の天使たちがベルリンの人たちを見守っています。

 それははるか昔から。この街で多くの人が亡くなり、街そのものが引き裂かれてしまった今も(壁があった時代の映画)。


 しかし、ダミエルは天使であることに少し疲れていました。自分たちの見ているモノクロームで音のない世界に、痛みも歓びもない永遠の傍観者であることに。

 あるとき目に止まったサーカスのブランコ乗りの女、マリオン。客入りが悪く今夜でサーカス小屋が終わってしまうことに悲しみながらも、好きなサーカスを続けるために(天使の囁きなしに)顔を上げる彼女。

 彼女の小さな部屋にそっと立つダミエル。壁の写真にはかつては結婚し子供もいたことを窺わせる写真も。あぁ、苦労してきてるんだ。何か彼女の力になれたら・・・。それは、これまで感じたことのない昂ぶり。しかし天使の彼には彼女に触れることすらできません。

 ベルリンの街に映画の撮影で訪れている俳優、ピーター・フォーク。とぼけた刑事役で人気者の彼は普段から役柄そのままの気さくな振る舞い。初冬のコーヒースタンドに立ち、見えるはずのないダミエルに声をかけてきます。

「・・・そこにいるな。見えないが、わかるんだよ。・・・こっちに来ないか?いいもんだぞ。冬のコーヒーのうまさ、寒い日に手をこすり合わせる暖かさ。知らないだろ?」

 天使をやめて人間になる? あなたがそうだったのか・・・?

 ・・・そして、ダミエルは天使をやめました。突然溢れ出る街の音、色彩。すべて知っているはずの街は初めてのことだらけ。先輩・ピーターに会いに行き、何よりもマリオンを探し当てないと。行けー、元天使!
ベルリン天使の詩3

 
 すごく好きな映画で、昨夜久しぶりに見ました。

 天使のときは音がなく白黒だった世界が人間になったとたんカラーになるのは、あざといと言えばそれまでですが、なんど見てもジーンときます。

 傍観者から当事者になって初めて感じる重み、痛み。そして歓び。初めてこの映画を見たときも今も、空の青さとかに自分が気づいているのかどうか、しばしば自問します。自分は当事者として生きてんのかって。

 色んな見方ができる映画なんだと思うのですが、今も同じように感じるってことはいいことなのかどうなのか。

 ダミエル役のブルーノ・ガンツさん。「ヒトラー最後の12日間」でヒトラーを演じてた人ですね。本人そのものにしか見えませんでしたが、こちらでも「あぁ、おっちゃんの天使ってこんな感じなんだろうな」って素直に信じました。

 続編は悲しそうなので見てません。リメイクものはベルリンじゃないし。


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