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ゆきゆきて、神軍

神軍0
 奥崎謙三(62歳)は、人の道を外れた者・責任から逃げる者を絶対に許しません。彼は自らの信念に基づき、一人でも果敢に行動します。決して退くことなく。

 かと言ってヒーローではなく、やってることはアナーキスト、テロリストと呼ぶほうが近いようです。彼は自らを軍人と名乗ります。自らが考えた「神軍」の「平等兵」。階級のないワンマン・アーミー。

 本作はドキュメンタリー、しかも奥崎をひたすら追って暴力や食人体験の告白(!)すらそのまま撮り続ける馬力です。これが実にヤバイ展開の連続。なにしろ奥崎は非常に風変わりな言動、それが本気である上にカメラを意識し続けているのですから。

 
 その戦争体験から国家、国体というものを憎む奥崎は、その象徴である天皇に向けて皇居でパチンコ玉を撃ち、天皇を題材のポルノビラをばら撒くという行動で独房生活を送っており、それ以前にも殺人で服役。前科者です。

神軍3
神軍2
 奥さんと一緒にクルマのバッテリーや修理などを商っておりますが、その主張を店舗のシャッター、自家用車に大書。皇居にも拘置所にも平気で乗り込んでその主張を叫びます。いや、ものすごいです。

 皇居前にこのクルマで乗り付け(しかも天皇誕生日)、警察に囲まれながら演説ぶつシーンがあったのですが、途中で現れる右翼の街宣車より奥崎号のほうが迫力あったもんなぁ。なにしろ軍人ですから。


 さて本作で追う奥崎の行動は、軍隊で起きた殺人の加害者たちの追求。ネクタイを締め、菓子折りを持ち名刺を渡して丁寧にあいさつ・・・。やがて、とぼけ続ける相手に激高しての暴力沙汰。この繰り返しがひたすら続きますが、何が起ころうと訪問しては食い下がるので、相手がすごい迷惑そう。

 が、奥崎は言い放ちます。
「暴力をふるっていい結果が出る暴力だったら、許されると。だから私は大いに今後生きてる限り、私の判断と責任によって、自分と、それから人類によい結果をもたらす暴力ならばね、大いに使うと」

 が、それはエスカレートしていき・・・。




 二十歳頃に初めて見て、昨晩久しぶりに見ました。2時間以上あったとは後で気づきましたが、まぁあっちゅうまに終わりました。次に何が起きるかわからない展開(人の家上がり込んで暴れるのが繰り返されるっちゃそうなのですが)、昭和らしい過剰な熱量。

 元上官の一人を詰問していると、前線で死んだ米兵の人肉を食べていたことが平然と語られるのは驚きました。戦争って、やっぱりシャバではないのだ。
神軍1
 右手のおじさんが平気で食人体験を語ります。左手中央の女性は、階級の低かった兄が死んだのは、食糧として殺されたのではと思い込んでておじさんを詰問。他の映画でこんなシーンまずないぞ。

 一方、軍隊内で殺された戦友の母を訪ねて「息子さんの死んだニューギニアに行きませんか?」と真剣に声をかける奥崎、泣いて感謝する老婆。後に亡くなられた老婆を訪ねた奥崎は彼女のためのパスポートを用意していました。本気だったのか。
神軍墓参

 いや、奥崎は常に真剣なのです。そして軍隊内の私刑を糾弾する内容もまともなのですが、周囲の日常と全く噛み合いません。奥崎が過剰なのを差し引いても、なぁなぁで流し続ける日常のぬるさもまた過剰なのか。

 偶然なのですが、これを見た翌日、以前録ったままにしていたNHKのドキュメンタリー「ノモンハン 責任なき戦い」を見ましたら、内容が奥崎の糾弾とほぼ同じもの。敵の戦力を軽視した上に曖昧な命令で2万人以上の戦死者を出しながら、結局誰も責任を取らなかった帝国軍人たち。いや、それは今ある色んな組織にもありそうなメカニズム。
ノモンハン
 退却した中佐に敗戦の責任をおっかぶせた上に殺しておきながら、戦後のインタビューでシラを切るエライさん。

 奥崎は独善・過剰です。が、自分で考えて動き、その責任をとるという点では大いに見習うべきでもありました。もっとも実際に会うとものすご疲れる人だろうなー。

 非常に特殊な映画でした。マイケル・ムーアさんも絶賛したとか。
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