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山口啓介 後ろむきに前に歩く/広島市現代美術館

山口ポスター
 先週の土曜日に行ってきました。

 同世代の方ですが、関西のお寺の息子さんとか。「後ろ向きに前に歩く」とは変わったタイトルですが、「人間は未来を見ることができない。過去しか見れずに体が前に進んでいる状態」だそうです。

 そういうことは考えたことがなかったのですが、この方は随分と色んなことを考えながら創作活動をしているようで、留学したアメリカで方舟や核、三木成夫やゲーテから植物と人体の関わり、フクシマの大災害と哲学そのものの思索、作品が並びます。

山口 エノラ・ゲイ
 銅版画からスタートされたそうですが、この作品は通常の20枚分という大きさ。銅版画自体、真っ黒で不穏なイメージを持ちがちですが、「エノラ・ゲイ」と題されたこの作品は、空飛ぶ原発といったイメージの船が、核の厄災のような渦の上を漂います。

 船、方舟をイメージした不穏な銅版画が以後続きます。めまいがしそう。この美術館の外は原爆が落ちた町。

山口 花の心臓
 いい画像がなく、本の表紙なのですが、作品自体はタテ3メートルはあろうかという大作。「人は一本の管である内蔵の周りにあれこれついているに過ぎない。その管を裏返せば植物となる」という三木成夫の論にいたく惹かれて生まれた作品だそうです。

 内蔵を裏返したほど、植物は何も隠しません。生殖器そのもののような巨大な蘭の艶めかしさ。息苦しいほど。

 三木成夫の本、通販で注文してみました。

山口 子の顔
 芸術家の目は社会にも向けられます。イラン戦争でのウラン劣化弾の被害を受けた受けた子供。あまりのテーマに手慣れた技術で描いてはいけないと、小学校以来の木版画で制作されたとか。無垢なような、強烈に歪まされたような居心地の悪さ。

山口 光の樹1山口 光の樹
 透明な立体作品。寄ってみるとカセットテープのケースに樹脂で固めた植物が閉じ込められています。「光の樹」という作品だそうで。映画ジュラシック・パークで、古代の樹脂から恐竜を再生したのにヒントを得て、未来に植物を残すイメージを表現。

 地元の中学生、花屋さんが協力した作品だそうです。大変な労力は、未来に遺すことの手間を感じさせました。真面目に。

山口 歩く方舟 瀬戸内は男木島の「歩く方舟」。これのミニチュア、版画がたくさん展示されていました。この模様は福島第一原発の壁面デザインで、4つのコブは原子炉のサイロと同じ数です。版画では、男木島を歩いて出発した方舟が海を渡り福島第一原発に覆いかぶさって石棺となるというストーリー。

 山口さんは震災後、毎日「震災後ノート」なる細かい日記を今も書き続けられているそうで、それも展示されていました。戦争の少なくなった時代でありますが、科学を制御しきれず人類に災いを為すことを見てしまった表現者は、記録し、生み続けているんですね。


 週末に広島市現代美術館に行くのは、美術館の人が30分ほど作品を案内してくれるからです。この日案内してくれた女性は大変な情報量で、なんにも知らない私に楽しく見せてくれました。

 9月までの展示なんで、もう一度行こうかな。

後ろ向きに
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