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さらば愛しき女よ

さらば愛しき女よ

「俺も年をとったぜ・・・」

 私立探偵フィリップ・マーロウは呟いた。このところ出ていった亭主や女房を探してくれなんて、パッとしない依頼ばかりだ。疲れやすくなったのは、そんな仕事とこのロサンゼルスのけだるい喧騒のせいだと思いたいけれど。

 今夜もダンスホールで見つけた家出娘を金を持っていそうな両親に引き渡したところだった。チップ?いらないぜ、給仕でもあるまいし。「チップはペット捜索のときだけだ。犬なら5ドル、象なら10ドル」。

 不機嫌そうな顔で車は去っていった。どこへでも行きやがれ。

 そこに現れたムース・マロイなる大男、「探偵か?頼みがある」・・・。奴が言い終わらないうちに、猛スピードで現れた車からマシンガンの一斉射撃。あわてて物陰に大男を押し込んだ。

 車が去って立ち上がったが、顔色ひとつ変えない大男。「7年前に銀行を襲って8万ドルせしめて、やっと出てきたんだぜ。やるもんだろ?」

 ・・・ただの大男じゃないんだな、わかったよ。仕事はなんだ?
「俺の女を探してくれ。名前はヴェルマ・バレント」
「どんな女なんだ?」
「・・・可愛いんだよ。レースのパンティみたいに」

 ロクな仕事もないしカネもほしいが、この野蛮な大男の純情にちょっと興味が湧いた。そのまま奴と一緒にヴェルマがかつて歌っていたという店に行ってみたが、そこは黒人専門の店(映画の舞台は1940年代)。

「シロは出ていきな!」と脅す用心棒をこともなげに叩きのめすムース。果てはヴェルマなんて知らないというこの店のボスに腹を立て、あっさり絞め殺してしまった。馬鹿野郎、手加減も知らないのか。

 俺の電話番号は教えたけれど、警察が来る前に姿をくらましたムース。馴染みの警部にはしぼられたが、依頼は依頼だ。ムースのことなんか話す理由は、ない。

 ヴェルマがいたはずの7年前を知っていそうな連中をあたってみてわかったのは、心を病んで精神病院にいるってことだった。悪いな、ムース。これが事実だ。

「この女は俺のヴェルマじゃない。やり直しだ」。・・・写真を投げ捨てるムース。なぜ、連中は俺に嘘を言ったのか? 情報をくれた男を再び訪ねると、行方不明だという。

 警察だけでなく、いろんなゴロツキどもがムースの居所を教えろとつきまといはじめた。殴られ、麻薬を打たれ、監禁され。

 ムース、そんなにヴェルマに惚れていたのかい?命を狙われながらも愛した女を探すなんて、そうそうある話じゃないぜ。わかったわかった、付き合うさ。チップはいらないぜ・・・。



 二十歳すぎによく読んでたレイモンド・チャンドラー。男子ならハードボイルドに一度は憧れるんじゃないでしょうか、知らんけど。タイトルがカッコええもん、そもそも。「さらば愛しき女よ」「長いお別れ」「三つ数えろ」・・・。

 が、登場人物の多さと、一見無関係なエピソードが次々現れる展開になかなかついていけませんでした。一度読んだだけでは、話の筋さえロクに負えない有様(´・ω・`)。みんなようわかるな、この人の話が。

 小説の映画化っていつも思うのですが、読んだ人の数だけ登場人物像があるんだろうなって。想像した姿、声、佇まいに好みの誰かを当てはめて。だから、「これじゃない感」もファンの数だけあるかもって。

 この映画、相当イメージ通りって私は思ってます。小説のマーロウは40前、演じたロバート・ミッチャムさんは58歳って違いはあれど。タフでジョークを欠かさないその姿。

 別の人が演じて、設定も70年代だった「長いお別れ」の方は随分叩かれたそうですが、「自分の掟に従って生き、死ぬ」男がフィリップ・マーロウの必要条件だと思ってるので、あれはあれで良かったです。ルパン3世的ハードボイルドってことで。

 えらそうに書いていますが、ハンフリー・ボガード版のフィリップ・マーロウってまだ見たことがありません。かっこいいだけだとイヤだなって思って。私の勝手な思い込みですが。

さらば愛しき女よ2
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