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時計じかけのオレンジ

時計じかけのオレンジ01
 近未来のイギリス。(とてもそうは見えんけど)15歳のアレックスは、自分を取りまく世界のうすのろさ、なまぬるさにうんざりしていました。

 明晰な頭脳と行動力、有り余るエネルギーという才能と若さの発散に彼が選んだものは、暴力とセックス。

 夜な夜な怪しげなバーでドラッグ入りのミルクを飲みながら、不良仲間、いや仲間だなんて思っていません。手下、奴隷と言った感じでしょうか。つるんでいる連中どころか、自分以外は全部石ころ同然。生きる価値のあるのは自分だけと言わんばかりの尊大さと自信。

 もとい、 夜な夜な怪しげなバーでドラッグ入りのミルクを飲みながら、  手下どもと今夜の退屈を紛らす相談です。

 何をやるのか?ホームレスの老人を面白半分にリンチし、敵対する不良グループを面白半分に病院送りにし(なかなか強いなぁ)、盗んだ車で適当に乗り付けた金持ちの家に押し入って、面白半分に金持ちの作家とその妻を縛り上げ、Singing in the rain♪と上機嫌に歌いながら作家を半殺しにして妻を輪姦し、金品を強奪。ひでえ。
時計じかけのオレンジ04

 あー、面白かった。あとは夜明け前に家に帰ってお気に入りのベートーベンを流しながら眠りにつきます。奪った金品はゲームの景品のように無造作に引出しへ。

 きっと毎晩こんなことやってんでしょう。面白半分に、被害者のことなんて何も考えず、自分のやったことさえ端から忘れて。

 が、こんなこといつまでも続きません。ある晩、 作家の時と同じ手口で押し入った 独り暮らしの金持ち老婦人宅。新聞に載っていたのと似た感じに警戒した老婦人は警察を呼びます。そして、手下扱いにムカついていた仲間はアレックス1人を置き去りにして逃走。

 気丈な老婦人を「つい」撲殺したアレックスは、あえなく逮捕~収監。10代なのに大人と同じ刑務所?とか思うのですが、とにかく懲役14年で刑務所入りです。

 それにしてもアレックス、悪人なんですよ。やってることの凶悪さもさることながら、平気でウソつきます。頭もいいのでその場しのぎのデマカセなんていくらでも。もちろん反省なんてしません。自分のためならネコもかぶり続けられます。更生の余地があるのかホントに疑わしい悪人です。コイツは。10代とは言え。

 そんな悪人・アレックスは、収監より2年を過ぎても模範囚を演じ続けます。聖書も暗記し、補佐役をやり続けた牧師からの信用も得るほどに。

 ある日「拷問に等しいが、被験者になれば刑期を大幅に短縮できる実験」なる噂を耳にします。アレックス、牧師にも視察に訪れた実験推進派の大臣にも訴え、まんまと被験者の座を射止めます。

 やったぜ、14年の刑が2年で出られる。実験は2週間だそうだけど、12年ガマンすることを思えばどうってこたぁありません。最後のネコかぶり、頑張ろー!

 が、この実験は想像以上のものでした。

 怪しげな注射を打たれてから小さなシアターの最前列にくくりつけられ、まばたきできないように上下のまぶたをぐっと開かれ固定されます。そして見せられる映像は暴力、強姦と言った残虐シーンの数々。まぶたには横にいる医師が絶えず目薬を差し、見続けることしか許されません。
時計じかけのオレンジ03

 やがて薬が効いてくると吐き気を催すように。・・・これが「実験」のねらいでした。暴力&セックスへの嫌悪感を植え付け、犯罪を起こさせないというものです。現政権はこうやって犯罪を抑止し警察のコストを下げ、敵対勢力をみんな政治犯で空っぽになった刑務所にぶち込む筋書き。

 2週間後、アレックスはずっかり別人に。要人へのプレゼンでは、ロールプレイで現れた男にひどく殴られても、裸の女性に誘惑されても吐き気ばかりで、何もできません。

 実験成功!そしてその状態で出所したアレックスを待っていたのは、彼にひどい目に遭わされたホームレス老人たち、昔の「仲間」たち、妻を輪姦(後に自殺)された上に自身も後遺症が残った作家たちからの凄まじい復讐。頼りの家族も「新しい息子」がいつの間にか入り込み、居場所はありません。

 因果応報・・・なのか。この先どうなるアレックス。

だがしかし、
 犯罪者とは言え、人格を人為的に作り変えてもいいのでしょうか?
 未成年から更生の機会奪っていいのでしょうか?
 反射的に暴力を嫌悪しているだけの彼を真人間になったと言っていいのでしょうか?
 「復讐」とはどこまで許容されるものなのでしょうか?
 政権を維持するために犠牲を供することは正しいのでしょうか?

更に、だがしかし、
 こんな方法以外にどうすればおとなしくさせられるのでしょうか?
 未成年とは言え、こんな凶悪犯に更生の余地が実際にあるのでしょうか?
 現実に再犯の可能性が低くなったことは悪いことなのでしょうか?
 あれだけの目に遭わされて、黙って見てるしかないのでしょうか?
 民主政治は、一面少数派を顧みないとも言えるのではないでしょうか?

更にさらに、だがしかし、
 一体、この映画はどう終わるのが「正しい」のでしょうか?



 名前は知ってたけど、初めて見ました。もう50年近く前の映画(寅さんの第一作からわずか2年後なのか)。さすがに当時の「斬新」を同じ衝撃では感じられませんが、137分飽きずに見られた画面とお話の切り替わりのテンポの良さ。初見じゃないように感じるのは、この映画から始まった表現を取り入れた後の映画で見た感じ、なんでしょうか。

 そう言えば「グッバイ、レーニン!」の部屋を片付ける早回しのシーンは、本作のオマージュってどこかで見たけど、たしかにそうでした。他にもたくさんあるんでしょう、私が知らないだけで。

 それにしても、登場人物の誰にも感情移入させないような連中ばかり。マンガのような立ち振舞いと話の進み方。暴力表現の過激さは、今見るとそうでもないのかもしれませんが、やはりなかなかのもんです。50年前はさぞびっくりされたことでしょう。

 政治的、暴力的なブラックなコメディですが、一度見て展開を覚えたら、時折コミカルな表情やダンスのようにものすご悪いことしてる身のこなしに乗せられて何度も見てしまいそう。グロテスクなトムとジェリーって感じ。同じ監督さんの「博士の異常な愛情」のほうがわかりやすかったけど、あれから7年後ですもんね。より捻った進化版なんでしょう。

 原作とは違うラストだそうですが、私もこっちのほうがいいなぁ。アレックス(ジョーカーのモチーフとなった一人とか)を祝う気持ちは全く起きないのですが。
時計じかけのオレンジ02
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