FC2ブログ

まぼろしの市街戦

まぼろしの市街戦01


 彼が見たものは奇妙なカーニバルだったのか、それとも、あらかじめ失われた楽園だったのか。

 第一次大戦末期、フランス北部の小さな町。敗走するドイツ軍は、機械仕掛けの騎士が0時の鐘を打つと町ごと吹っ飛ぶほどの爆弾を隠して逃げました。

 暗号名「タラ」のレジスタンスは市民に避難を呼びかけ、後方のイギリス軍にも報せますが、爆弾が仕掛けられた、真夜中に爆発する、騎士が打つ、といった断片を伝えたところでドイツ軍に射殺されます。

 それを聞いたイギリス軍の司令官。町はまだしも、それほどの大爆発であれば橋まで壊されて追撃が難しくなる・・・が、正直こんな危険な任務は気がすすみません。爆弾のありかを探るためにフランス語が話せて、死んでも大勢に影響ないヤツを志願兵に仕立てるか・・・。
 
 都合よく一人だけおりました。通信担当(というか、伝書バトの世話係)のプランピック二等兵。
「いや、自分はフランス語は話せますが、爆弾処理は未経験であります。どうかもう一名ほど・・・」
「私に兵を二人も殺せというのか!?行って来い!」・・・ひでぇ。

 可哀想なプランピック。二羽の伝書鳩入れた鳥カゴぶら下げて町に行きますが、あまり優秀な兵士ではないのか、残っていたドイツ兵に簡単に見つかります。鳥カゴをそこらへんの民家に隠し、確かめもせずに逃げ込んだ先は精神病院。そこには、置き去りにされた患者たちがトランプなどして過ごしていました。
まぼろしの市街戦12

 
「おや、お客様いらっしゃい。私たちはクローバー侯爵とデイジー司教♪」・・・どこが侯爵だ、司教だ。とんだとこに入っちまった。が、追ってきたドイツ軍にも同じ返答で(結果的に)追い返してくれました。イカれてるのも時に役立ちます。
まぼろしの市街戦02

「ところで、あなたの自己紹介は?」
 ・・・え?俺? あー、手元のトランプ見て適当に答えとけ「・・・・ハートのキング・・・」
「おぉ!あなたが陛下でしたか!みなさん、我らの王が帰ってまいりました!」
 王様王様♪と盛り上がる精神病院を後に、爆弾を探しに町に出るプランピック。が、カギも外れてて患者たちも次々と外へ!

 ドイツ軍も市民も町を捨てて、もう誰もいません。患者たちは残された服を着込み、それこそ司教に、侯爵に、消防隊員に、床屋に、ラグビー選手にと、コスプレ祭り。「クローバー侯爵」は女性患者にも素敵な服を着せ「侯爵夫人になっていただけますかな?」と優雅なプロポーズ。ある女性患者は派手めのメイクをして、何人もの女性を従えた艶やかな娼館のマダムに。提督に扮した男はこれまた取り残されたサーカス団の動物を次々と放ちます。

 町は紙吹雪と楽団(上手)、熊やゾウも練り歩く大パレード状態に。戦禍の残る灰色の建物をよそに、賑やかな衣装と多幸感溢れる笑顔の患者たち。なんて鮮やかな、なんて幸せな、なんて平和な。
まぼろしの市街戦23

 プランピックはそんな町を駆けまわり爆弾のありかを尋ねますが、超ハッピーな群衆は誰も相手にしてくれません。おいおい、まだ出てはないけどライオンのオリのカギ外れてるぞぉ!提督姿の患者は事もなげに応じます「百獣の王自らが、中を選んだのです。王とは外に出ないものですよ」。
 
 ・・・ダメだこりゃ。隠してたハトに伝聞を託します。「この町は間違いだった。住民は変人ばかり、ゾウやライオンはいてもタラとは会えなかった」。一羽飛ばした後「あ、忘れてた」と「爆弾は消失した」と2信目を託したハトが飛びます。
 
 もうここには用はない。娼館にいたコクリコちゃんは可愛かったけど軍服に着替えて帰るか、と戻った精神病院は空っぽ。あぁぁぁぁ!!やっぱりこの町だったんだぁ!町の変人どもはこいつらかぁ!!!
 
 その頃ドイツ軍、「伝書バトだ!撃てー!」。1羽は撃ち漏らしたものの伝文ゲット。2通目だけですが。ええっ?「爆弾は消失した」だとぉ!?すぐ誰か見て来い!

 プランピックは躁状態の患者たちに捕まり、王様っぽい服に着替えさせられて「王の戴冠式だー!」と教会に連れて行かれます。そこへ現れる鉄十字の装甲車。「おー、兵隊さんもやってきたー!」すっとんきょうな原色パレードに巻き込まれるドイツ兵たち。紙吹雪舞う舞う。患者たちを教会に閉じ込め、爆弾を埋めたところが無事なのを確認して、ほうほうの体で立ち去るドイツ軍。
まぼろしの市街戦04

 尖塔からそれを見ていたプランピック、爆弾のありかを見つけたと大喜び。外に出て教会を開け放ち「やったぞ、町は救われた!」。救い出された患者たちも「王様バンザイ!」と大歓喜。嗚呼これぞ王、これぞ平和。
まぼろしの市街戦15
 
 イギリス軍も伝文を受け取りましたが、ライオンだのタラだのと要領を得ません。またも死んでもかまわないような出来の悪い斥候どもを差し向けますが、手柄を横取りしようとプランピックをしばいて気絶させ、うろつくゾウや熊に驚き逃げ帰る始末。
 
「おぉ、王が深い眠りにつかれた(悲嘆)!」「殿方は黙ってて、ここは女の出番よ♪」。侯爵夫人と娼館マダムは、可憐な娘・コクリコをプランピックのもとへ。こういうときは窓から入るもの、と電線を綱渡りのように歩くコクリコ。鮮やかな黄色のチュチュ姿はまるでチョウチョか妖精か。やがて口づけで目を覚ますプランピック。「なんと!愛の力で王がお目覚めに!」
まぼろしの市街戦16

 いや、こうしてはいられません。なんとか爆弾を止めないと。しかし爆弾を閉じ込めた石棺は固く、どうにもできません。諦めたプランピックは、せめて患者たちだけでも救おうと今夜中に爆発して町が吹き飛ぶことを何度も伝え「王の命令」として全員で町を出ることに。
 
 ・・・が、誰もついてきませんでした。「王様、町の外には血に飢えた獣ばかりです」・・・ある意味、彼らの言う通りでもあります。すっとんきょうとは言え、悪意なき彼らに親しみも感じてきたプランピック、すべてを諦めて彼らとともにかりそめの楽園で死ぬことを選び、戻ります・・・。
 
 この町、最後の夕暮れ。もうパレードも終わりました。不思議な透明感と諦念に包まれながら、患者たちは優雅に最後の時を楽しみます。
 
 真夜中の3分前、穏やかにプランピックと唇を重ねるコクリコがふと視線を外しました。
「どうしたの?」
「・・・見て。あの尖塔から騎士が出て、真夜中を告げるの」
 これかぁぁぁぁ!飛び出すプランピックは見事爆発を阻止!本当に町を救ったのです。王様バンザイ。市民よバンザイ。
 
 しかし、それはこの夢の終わりをもたらすものでもありました・・・。極彩色のおとぎ話は終わってしまうのでしょうか?・・・・いや、ここまでの93分がラスト10分のための前フリだったとは。

 みんなぁ!やっぱハッピーがいいよねぇぇぇぇ!!!!




 面白かったー。1966年のフランス映画だそうです。全然知りませんでしたが。「男はつらいよ」一作目に先立つこと3年、ベトナム戦争の時代でしょうか。あらためて寅さんの不滅とフランスの素敵さ、そしてこの映画が反戦映画であったことを見終わった後で知りました。

でも、いつのものであっても私が面白かったらそれでええです。評論家でもあるまいに(*´ω`*)。

 めっちゃ色鮮やかな衣装が(患者さんたちが好き勝手に着てるから脈絡が全然ないので余計に)楽しい楽しい。公爵夫妻はフォーマルにモノトーンですが、娼館のお姉さんたちの艶やかなこと。いや、実際にお客をとるわけではないのが、またいい。生身のおとぎ話です。

 一方で、詩的な言葉と優雅な振る舞い。だんだん公爵や司教に見えてくるほど(そもそも、患者たちが本当は正気でないかと思わせるフシもしばしば)。夕暮れのシーンは素敵でした。あんな風に死を迎えるのもいいなって思ったほど。

 色々考えさせられた一方で、シンプルに楽しくて愛おしくて幸せな気持ちにもさせてくれました。

 なんか、ええなぁ。大好きです、この映画。
まぼろしの市街戦03
関連記事
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

No title

写真や感想を見ているだけでも、楽しそうで見てみたい映画になりました。
フランス映画なので、反戦映画であってもウィットやユーモアもあっておしゃれに仕上がっているのでしょうね。

ミコリーさん

ミコリーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

あ、ありがとうございます\(^o^)/。フランス映画って、やっぱ違いますよね。奇作とかカルトとかいう評判らしいのですが、とってもキュートで楽しい、またちょっと怖い映画でした。

面白かったー。これはちょっと人に薦めてみたいかも。