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湯を沸かすほどの熱い愛

湯を沸かすほどの熱い愛00

「湯気のごとく、店主が蒸発しました。当分の間、お湯は沸きません。幸の湯」・・・。と寂しい一枚の張り紙。古い銭湯は休業となっていました。
湯を沸かすほどの熱い愛02

 一年前に姿をくらました夫・一浩。残された妻・双葉は随分探しましたが見つけられず、ベーカリーで販売のパートをしながら諦め半分で高2の娘・安澄と暮らしています。

 暮らしも心配ですが、安澄が学校でいじめられているらしいことも心配のタネ。それでも明るく振る舞う双葉ですが、ある日パート先のベーカリーで倒れ、担ぎ込まれた病院で告げられたのは「末期ガンで余命2・3ヶ月。全身に転移しており、手の施しようがない」という診断結果。

 あまりに、あまりです。手のしびれといった自覚症状はあったものの、まさか自分の身にこれほどのことが・・・。


 双葉の毎日が変わりました。探偵を雇い、となり町で暮らしていた一浩を見つけます。花柄のエプロンでのんきにカレーなど作っていた一浩はビビりますが、双葉は自分の病状を話し、追い詰めることなく連れ戻します。

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 その晩、いつも家族の節目に必ず出てくるしゃぶしゃぶが夕食なのを見て訝しがる安曇の前に、しれっと戻ってくる一浩。そしてその後ろについてきた小さな女の子(!)。「おう、安曇。これ9歳、鮎子。妹」

 飲みに行った店の女性の部屋になりゆきで転がり込んだものの翌日には鮎子を残して女性は消え、ずるずると鮎子と暮らしていたという話なのですが、その真偽はともかく「明後日から銭湯を再開するわよ!必ず4人みんなでやるのよ!」と宣言する双葉。翌日、安澄と鮎子も近所に再開のビラを配ります。

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 一方、安澄へのいじめはますます激しくなっていました。クラスの女王的存在の女子生徒とその取り巻きが主犯格なのですが、それを咎める雰囲気はクラスにありません。ヘルプレスな安澄、地獄です。

 ある日、体育の後に制服を隠されます。仕方なく体操着のまま教室に入る安澄に、「今は体育の授業じゃないっつーの」と言い放つクラスの女王。そして何も言い返せない安澄。

 翌朝、「絶対に学校に行かない!私は最下層の人間だから、お母さんにはわからない!私はお母さんにように強くない!」と泣く安澄。「絶対に体操着で行け!ここで退いたら、この先何も自分でできなくなる」と叱咤する双葉。壮絶なシーンでしたが、しばらくすると安澄は学校に行き、心配する双葉は家の前でいつ帰ってきてもいいように待ち続けます。

 教室。体操着で遅れて入った双葉をクラス全員が笑います。ホームルームで「幸野の制服について知っている者は名乗ってほしい」と担任が言いますが、もちろん誰も反応しません。しばらくの後、安澄が立ち上がり、担任(男性)の制止も聞かず、体操着を脱ぎ捨てます。

 下着姿になり「今は、体育の授業じゃないから・・・。制服、返してください」と言葉を絞り出す安澄。それは「彼氏いるの?今じゃなくてもいいから、ここぞって時にこれを着るのよ」と、ついこの間に双葉が買ってきてくれた、初めての大人の下着。意図したものではなかったながら、「ここぞ」を今と定めた安澄の悲壮な覚悟、そして勇気。

 気を失い倒れ、保健室で横たわる安澄に、ドアが乱暴にあけられて投げ込まれた制服が目に入りました。制服で帰宅した安澄を思い切り抱きしめる双葉。「おかあちゃんの遺伝子、私にも少しあった!」と号泣する安澄を抱きしめ続けます。
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 鮎子は未だ幸野家に馴染んでいませんでした。ある晩、鮎子が番台のレジから小銭を抜き取っていたのを双葉は見てしまいます。鮎子が学校に行っている間に彼女が大切にしていいる箱を開くと、小銭の他に手帳を破ったようなメモが入っていました。「鮎子の誕生日にきっとお母さんが迎えに行くからね」と書かれた。

 雨の降るその晩、遅くなっても帰ってこない鮎子。今日が誕生日と気づいた双葉は安澄を連れてとなり町に急ぎます。そこにはアパートの部屋の前でうずくまっている鮎子が。「・・・心配させた罰に、明日は銭湯の掃除1人でやること」と優しく言って抱きしめる双葉。

 翌朝の食卓はしゃぶしゃぶでした。「・・・できたら、これからもこの家にいたいです。・・・でもまだママを好きなことを赦してください・・・」と震えながら言う鮎子を再び双葉は抱きしめるのでした。


 「突然だけど旅行に行くよ!」 と、一浩に店をまかせ、双葉と安澄、鮎子は箱根に出かけます。「富士山を見て、タカアシガニを食べる」女子旅。双葉の体は大丈夫なのでしょうか。

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 途中のサービスエリアで、拓海と名乗るヒッチハイクの若い男性を乗せます。北海道から南に向かっているいるという彼、イケメンで調子のいい男の子。安澄と鮎子が眠っている間に聞いた彼の話は「北海道は嘘。複雑な家庭に嫌気がさして目的もなく家を出た。目標に縛られた人生なんてまっぴら」。カチンと来た双葉は彼を追い出しますが、「私があなたに目標をあげる。北海道まで行ってみなさい!」と叱咤。喝を入れられた巧、目が覚めたように反対の方角に歩き出します。

「北海道まで行ったら、必ず双葉さんに報告に行きます!」
「・・・いいけど早くしてね。私、そんなに待てないから」


 タカアシガニ、女子3人で食べました。給仕をしてくれたのは、明るい笑顔が感じのいい聾唖の女性。お勘定の時、なぜか双葉が彼女をひっぱたきます(!)。店の前に停めた車の中で、双葉は安澄に告げます。彼女こそが安澄の実の母親であることを。そういえば、映画冒頭で「毎年タカアシガニを送ってくる、酒巻君江なる謎の女性」のエピソードが短くありました。そしてお礼状は昔から安澄が書く役割にされていることも。

 「挨拶しなさい。夕方に迎えに来るから」と安澄を置いていく双葉。後ろの座席では鮎子が声を殺して涙を流しています。「もしかして安澄ちゃん?」と書いた筆談用ボードを手に、お店から聾唖の女性・君江が出てきました。ショックを受けながらも「あなたが私のお母さんなのですか?」と手話で話しかける安澄。あ、そう言えば映画中盤で安澄が手話を理解しているエピソードが一瞬あったっけ。

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「なぜ手話を?」・・・。手話で尋ねる君江。
「・・・いつか必ず役に立つから、と母から覚えるようにと言われて」、答える安澄・・・。


 大きな意味のある旅行でしたが、夕方に迎えに来た双葉は力尽きて倒れます。


 ホスピスに入る双葉。しかし、彼女の奮闘は一人ひとりを、みんなを変えていました。一浩はマジメに働き(当たり前か)、安澄は強くなり、鮎子は安澄をお姉ちゃんと自然に呼ぶようになりました。目標を遂げた拓海は双葉の事情を知って銭湯に住み込みで働くようになり、君江は頻繁にやってきて家族の世話も徐々にするようになって。一浩を見つけてくれた探偵は、幼い娘(この子もまた母親と生き別れていました)とともに親戚のような関係に。

 双葉の余命は変えられないのかもしれません。それでも、残した家族はその形を変えながらも、幸せに向かって力を合わせ始めていました。双葉のおかげで、双葉のいないであろう未来に向かって。

 双葉を送る時が近づいていました・・・。




 これ、めっちゃ泣きました。感動したいと思って借りた映画でしたが、期待以上に以上に以上にグッときました。重要ながらもはしょって書いてしまったエピソードもまだいくつかあったほどの濃い内容。父親の失踪、娘のいじめ、やってきた女の子、娘の実の母親等々、ひとつだけでも映画のテーマになりそうな話が次々出てきて、全然長さを感じませんでした。

 どのエピソードも双葉の我が身を省みない行動・言葉で摩擦がありながらもいい結果となります。が、それは全然いけないことではないと思いました。映画がハッピーに着地して何が悪いのか。捨て身のヒロインが見事やり遂げて、何が悪いのか。

 そう、双葉は捨て身です。熟慮したり試行してたりする時間はありません。

 よく「今日が最後の1日だと思ったら、あなたはどう生きるか」みたいな文言がビジネス本とかにも出てきますが、観念としてはともかく実際にそう行動することはなかなかできません。映画とは言え、双葉もその境遇になって初めて動けたのですから。

 ただ、そこからが凄かった。本当に凄かった。捨て身の本気が人を動かした話、です。宮沢りえさんの映画って初めて見たのですが、ものすご上手でした。他の出演者さん達もみんなよかった。オダギリジョーさん、ひょうひょうとしたダメ男っぷりがよかったぞー!杉咲花さん、泣くのも怒るのも笑うのも本当によかったぞー!松坂桃李さん、控えめな演技がよかったぞー!探偵の駿河太郎さん、あったかい関西なまりもよかったぞー!君江役の篠原ゆき子さん、セリフなしで伝わる気持ちがよかったぞー!鮎子役の伊東蒼さん、まだ幼いのにすごかったぞー!
湯を沸かすほどの熱い愛11


 いやー、いいもん見させてもらいました。6・7回ほど大泣きしましたわ。何より、この映画見た日から、生きてる間に後悔しないようにって、前より快活になりました。続けていきたいです。
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コメント

非公開コメント

No title

強い強い愛ですね。
読んでるだけで感動してしまいました。

感受性が強いんですね。
その映画観たことあるけど6、7回も泣くなんてこと全くなかった。。。
感受性が強く優しくて素敵♪

ミコリーさん

ミコリーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

これ、私には刺さりましたー。なんやかんや言うて、「誰かの本気が周りを変える」話と感じたので、そういう意味でも刺激になりました。見てよかった―。

はーとまいんどさん

はーとまいんどさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

映画や本とかで簡単に泣いちゃうので、ちょっと恥ずかしく思っております (´・ω・`)。まか、レンタル分のモトは充分とったかな、と(笑)。

>素敵♪
いや、そんな。もっと言ってください。