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博士の異常な愛情

博士の異常な愛情

 オトコだけで世の中動かすと、ロクなことがない。この映画を見ると、いつもそう思います。さっき久しぶりに見て、また、そう思いました。

 物語は60年代の冷戦真っ只中。アメリカは、有事の際は仮想(でもないか)敵国ソ連に2時間以内で目標軍事拠点に水爆を投下できるよう、常時50機程度の大型爆撃機を飛ばしていて、彼らパイロットは空中給油で全く無寄港(=母国の様子を知らず)に、ぐるぐるぐるぐる旋回生活。
 
 そこへ、打倒共産主義!に凝り固まりすぎた狂気の空軍司令官が、報復核攻撃の超緊急&極秘ミッションを全爆撃機に指令!
 
 誰もホントにそんなもんあるわきゃない、と思ってる乗組員達は、雑誌読んだり昼寝してたりしてたけど、「マジかよ」と、戦闘態勢に。
 
 爆撃機とは、爆撃をするために飛んでます。ましてや、見られないけどこんな「報復攻撃」のミッションが出るってことは、オレたちの国は、愛する人々はどんな目にあっちまったのか・・・。 核攻撃なんて誰もやりたかないけれど、こうなりゃ帰還後の出世も含めて、爆撃GOだぜ、野朗ども!

 一方、ペンタゴンの作戦会議室では、大統領中心に「さぁ、どうする」と緊急会議。ホントに核戦争なんて起きるわけないと思ってたのは、ここでも一緒で、「この際、先制攻撃でソ連壊滅」を叫ぶ将軍サンは、さっきまで愛人とエッチなことしてたほど。
 
 ソ連大使を呼んだり、クレムリンに電話したり(向こうも酔ってお楽しみ中だった)、と、全面核戦争回避に尽力しながらも、どいつもこいつも自分の立場と狭い視野むき出しで、ブラックなドタバタは続き・・・。
 

 これは傑作です。何度見ても、黒い笑いの鮮度が落ちません。被爆地ヒロシマで生まれ育った身なれど。

 劇中の兵士は、それまで単なるあんちゃん・おっちゃんでしたが、命令が下ると、全員が一糸乱れぬチームワークで巨大爆撃機の歯車となり、また人間独自の機転で、目的遂行にベストを尽くします。
 
 一方、ソ連が開発した人類滅亡への最終兵器は、その大威力の起動をためらわぬよう、全てコンピュータに委ねているという設定(実際、そのテのものは、そうつくられているのかも。知らんけど)。
 
 組織論で必ず出てくる究極の組織は、軍隊。そして、兵士の行動は目的遂行に全てが優先されます。
 
 放たれた弾丸が決して戻らないように、そこには「人間的」な要素はないほどいいのかも知れません。敵は人間ですらなく、銃後を思えば「非人間的行為」も止むを得ないわけで。
 
 
 かくて、兵士は兵器そのものに。

 「指導者は必要です」と、ストレンジラブ博士は、全面核戦争後の生き残りのために「選ばれた人たち」のみでのシェルター生活を提案するにあたり、政治家と軍人の高官の優先をエサとして語ります。男性一人に女性十人という、「繁殖活動」のオプション付きで。

 指導層と言え、エゴに凝り固まった人間は愚かです。職業・使命とは言え、自分の考え・行動を抑えざるを得ない立場の人間は哀れです。そして、そうした体制を選ぶともなく選んでいる「無辜の民」もまた、責任の一端が。
 
 もっとも、誰にもどうしようもなくて。
 
 このフィルムの中に出てくる人たちはムチャクチャに見えながらも、各々の立場ではけっこうマトモなこと言ってるし、ベストも尽くしてます(尽くそうとしてます)。話が国家単位だの、全面核戦争だのだから、愚かしさが増してるだけで、私の日常のセコいスケールも似たようなもんです。いや、もっとマヌケでしょう。セコい分。
 
 

 笑っても、深刻にも見ることの出来る映画?
 
 
 それは、ソ連なき今も。
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コメント

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No title

こんばんは。

なんだか、ブラックな感じで面白そうですね


スタンリーキューブリック・・私も好きですすが、白黒のと言うことでなかなか手を出せずにいました・・。

食わず嫌いであるのは確かなので、この映画でチャレンジしてみます

No title

クラッチさん、これはイイですよ。90分ちょっとと、長くないし(笑)。