FC2ブログ

愛と感謝が残ってた

 昨日は夕方から実家に行きました。音楽講師をしている姉が仕事が夜間の仕事が入っている日なので、その間に父と一緒に留守番をするために。

 95歳の父はありがたいことにまだ自分で動け、会話も充分できるのですが、さすがに記憶などは相当怪しくなっています。とうに亡くなっている自分の弟や父母がさっきまで来ていた、はしょっちゅうで、困るのは10数年前に亡くなった母の死をたまに認めない時など。

 昨日は、かつて自分が働いてた会社から明日出張を頼まれているが、時間がわからないので電話して確かめてみてくれとしつこく。しまいには、出張の準備をしようにも何がどこにあるかわからない、それは姉がセコセコと働いているためである。自分が働いて金を残している(そんなものはないです)のに、なぜ止めても働いて自分を放っておく親不孝をするのか、と。

 これにはさすがに腹が立って、強い口調で咎めました。父も激高しましたが、私は言いたいこと言って少し冷静になれ、父の痴呆のいいところ(?)は「自分が怒っていたこともすぐに忘れる」ため、気を取り直して二人で夕飯を。

 姉が作ってくれていたおでんは母の味によく似ていて、私には何よりもウマい。アルコールも入って父と話していたら、また父が「お母さんも姉ちゃんも帰ってこない。二人一緒に姿が見えない日は初めてだが、なにか自分に隠し事をしているのか」などと言い始めました。

 もう怒るのはやめようと適当に聞き流していましたが、またぞろ姉を悪く言い始めたので、
「お父ちゃん。言いたくはないんじゃが、ホンマのことを言うけぇ聞いてもらえるかね」
「おぉ、言うてみい」
「俺は姉ちゃん・兄ちゃんとはお母ちゃんが違う(異母兄弟)けぇ、お母ちゃんのただ一人のせがれじゃろ」
「おぉ」
「じゃけぇ、今から言うことはホンマのことよ。ただ一人のせがれがこがぁな嘘を言うわきゃあないんじゃけ。残念なんじゃが、お母ちゃんはとうに死んどられます」
「・・・!そがぁなことがあるかいや!今朝も一緒におったど。毎晩、姉ちゃんと3人で枕を並べて寝とるんで」
「・・・ほうね。そりゃあええことじゃ・・・。僕もそこにいれてもらいたいよ」
・・・以後、母が亡くなった日の記憶を手繰り寄せると、倒れてかつぎこまれた病院に私と父が向かった細部までよく覚えていました。
「お父ちゃん、よう覚えとるじゃない。ほうよ、どこにおるかつかまらんかったお父ちゃんと電車で偶然会うて、一緒に病院行ったよねぇ」
「おぉ、○○駅でお前が電車に乗ってきて、一緒に市民病院に行った」
「おー、病院の名前までちゃんと覚えとるじゃない」
「ほうよ。それでお母さんは無事治療されて帰ってきた」
「・・・そういう風に覚えとるんね・・・。悲しいことなんじゃが、お母ちゃんはそのまま翌朝に亡くなってしもうたんじゃ」
「・・・翌朝、亡くなった・・・」

 ようやく父の記憶が戻ったようでした。しばらく黙り込んでいましたが、そのうちに独り言を。
「・・・お母さんはホンマによくしてくれた。子供をお前を産んでくれて立派に育ててくれた。金のない家じゃったが、やりくりもしてくれて家も建った。わしはホンマにお母さんが大切じゃったんじゃ・・・」

 私、号泣しました。色んな記憶や考えが混沌としてきた父ながら、母への愛と感謝がしっかりと残っていることに。泣けて泣けて仕方ありませんでした。自分にはこれはできない、なんて幸せな夫婦だったのか、なんと立派な母であり父であったのか、と。

 ぼろぼろと泣いていると姉が帰ってきて、3人で夕飯を再開しました。

 帰り、車で送ってくれた姉に「お父さんは本当に優しい人なんよってやっとわかったって、姉ちゃんが何年か前から言いよったけど、俺は今日初めてそれがわかったわ」と、また泣いてしまいました。

 父とこういった会話はこれからも繰り返されることでしょう。いや、父が思い出すことはもっともっと少なくなってくるかもしれません。それでも昨夜の衝撃を思い出して優しく接しようと思います。

 あんなになった父ですが、愛と感謝は残っていたのですから。立派な人だと心から思います。

 あんなには、なれそうもありません。
関連記事
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

No title

お父さん 優しい人ですね。感動してしまった(ノД`)・゜・。
悲しいですね老いていくというのは
わたしの父も認知症で見ていて辛かったです。
home in my shoesさんも優しい人です。

No title

愛情は忘れませんよ
きっと、いつまでも

No title

涙が出てしまいました。
夫婦愛ですね。

No title

 家族愛を改めて感じて涙するhomeさんは素晴らしいと思いますよ。 

 自分はそういう感情は持てないので、homeさんはもっと自信を持っても良いと思いますが。 

切なくて辛くて酷で美しいです
言葉じゃいい表せません
私も涙出ましたが、なぜ涙が出るのかわからないです

こむぎさん

こむぎさん、こんにちは。コメントありがとうございます(*´ω`*)。

いや、お恥ずかしい。私も驚き、感動してしまいました。父が色々と難しくなってきているのは感じますが、考えてみれば親族で一番長寿になっていたので、こちらも大変になりそうです。

しかし、深い衝撃と感動でした。ホントに。

パタさん

パタさん、こんにちは。コメントありがとうございます(*´ω`*)。

そうですね・・・(*´ω`*)。きっと、パタさんはいつまでも暖かい気持ちを持ち続けられる方だと思います(*´ω`*)。

私もしっかりしなきゃ。

ミコリーさん

ミコリーさん、こんにちは。コメントありがとうございます(*´ω`*)。

そういえば父は先妻を病気で亡くし、二人の子供まだ小さかった頃に後妻で母と一緒になったのでした。元々丈夫とは言えなかった父が親族で最も長寿になっていたのも驚きですが、二人の奥さんに先立たれた気の毒な人にもなっていました。

先妻さんの死去はさすがに錯乱しませんが、人間とは複雑なもんですね・・・。

マツケラさん

マツケラさん、こんにちは。コメントありがとうございます(*´ω`*)。

なんちゅうか・・・95歳まで生きること、そこから振り返ることをどんなふうに思い出せるものか、といろいろ驚かされました。あんなふうには・・・とてもなれそうにありません。決して裕福でなかったですが、豊かな人だなーと父に感心しました(*´ω`*)。

レモングラスさん

レモングラスさん、こんにちは。コメントありがとうございます(*´ω`*)。

私が話したことを聞かされる父の気持ちはどんなものだったのか、正直その時はまったく慮ることもなく、今になって別な言い方もあったのかもと反省しています。

それにしても、色んなことを忘れ、自分に悲しくないように記憶を書き換えても、まだ母への愛と感謝がしっかりと残っていたこと、一生忘れられそうにありません。

No title

お父さん、本当にお母さんが大切で大好きだったんだろうね。人の気持ちって、なんで生きていて元気なうちに
分からないもんなんだろう。何で言えないもんなんだろうね。誰もが心の奥で言えない言葉ってたくさんあるんだと思う。
プライドとかいろんな感情で言えないんだろうね。
ホームさんの奥さんに対する気持ちを見て、お父さんに似てるんだって思った。

No title

私も今日、父に付き添い、恐らくアルツハイマーと診断される事なので
ホント他人事ではないです。なるべく怒らない様にしているのですが
偏屈な父と衝突を続けてきたので…
お姉様は立派に面倒見られているんですよね。
その流れは泣けますね…。
お父様の愛情とHomeさんの優しさと。

かあちゃんさん

かあちゃんさん、こんにちは。コメントありがとうございます(*´ω`*)。

思い出したら、倹約していた母は晩年に父と随分あちこちに旅行していました。安いツアーばかりだったみたいですが、二人でそれまでの苦労が報われるような時間を過ごしたんでしょう(*´ω`*)。

私は自分の小さな気持ちやプライドに囚われて妻を愛しているかどうかわからない、小さい男です。改めて衝撃でした。

太郎さん

太郎さん、こんにちは。コメントありがとうございます(*´ω`*)。

今日がそうなのですね。お父様、少しでも明るい目のある診断だといいのですが・・・。

姉には死ぬまで頭が上がりません。姉のおかげで私も兄も自分の家庭中心にやってこれましたので・・・。

しかし、父の言ったことには驚きました。あんなにはなれそうもありません。