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男はつらいよ 純情編

男はつらいよ純情編01
 ぼんやりと夜汽車に揺られ、缶ビールをちびりちびりと我らが寅さん。向かいの席には妹・さくらと似た年頃の、赤ん坊を抱えた若いお母さん。ふと、里心がゆらり。

 入ったそば屋には、なんと故郷・柴又を取り上げたテレビ番組が。御前様、とらやのおじちゃん、そして江戸川をバックにさくらと赤ん坊の笑顔が。もう矢も盾もたまらずありったけの10円玉でとらやに電話をかけました。

 が、口をついたのは「俺は忙しいんだ。ここは山口、次は九州だよ」。素直になりゃあいいものを・・・。

 場面替わって、目指す五島列島行きの船がもう今日は終わったと聞かされた長崎の港です。ふと見ると、またも妹・さくらと似た年格好の若い母親(宮本信子さん。若い頃からお上手です)が赤ん坊と一緒に所在なさげにしゃがんでいます。聞けば五島に帰るとか。
 
「あの・・・すみませんけどお金ば貸してもらえんとでしょうか。ちょっとでよかとです。今晩泊まるお金が足らんとです・・・」
 切羽詰まったその様子。しばし考えた寅さん「・・・来な」と歩き出します。
男はつらいよ純情編10
 
 安宿のひと部屋で女が泣きながら話すには、駆け落ちしてまで一緒になった亭主がバクチに溺れて家の金持ち出すわ暴力振るうわで、見限って故郷に帰るとのこと (´・ω・`)。
 
 そんな男は捨てちまって故郷で幸せになりな、おやすみよ、と襖を開けて隣の部屋に行こうとした寅さんに「・・・せめて、こんなことしか。子供がおっけん電気ば消してください・・・」と服を脱ごうとする女。
 
「・・・あんた、俺がそんなつもりだなんて思ってたのかい・・・。もしも俺の妹がわずかな宿賃で男に身をまかせたとなったら、俺はその男を・・・殺すよ。あんたの親御さんもきっとおんなじ気持ちだよ。また明日な・・・」と、そっと襖の向こうに行く寅さん。

 実に男前でした。ちょっと泣けちゃいました(*´ω`*)。
 
 さて、故郷・五島。女の実家は男手ひとつで営む小さな旅館でしたが、父親(森繁久彌さん!)からは厳しい言葉が。 

「・・・三年も便り一つよこさんと・・・。おいが死んどったら、どぎゃんしとった。お前にはもう帰る家はないんじゃ。駆け落ちまでした男なら、どこかひとつでもよかとこがあったやろ。それを育てるんがお前の仕事じゃ・・・」。孫に一瞬目を細めた後の諫言が、寅さんにも刺さります。
男はつらいよ純情編03


男はつらいよ純情編04
「・・・お父さん、あんたの言う通りだよ。いつでも帰るとこがあると思ってっから俺はいつまでも一人前になれねぇんだ。決めたよ、俺はもう二度と帰らねえ!」
 などと問わず語りでまくし立てたその直後、五島を出る最終船の汽笛を聞くや否や「やっぱり帰らなきゃ!」と飛び出していった寅さん。なんだ、シリアスなムードは台無しに。どうすんだよ。
 
 
 歓迎を期待して帰ってきたとらやでしたが、どうも様子が変です。それもそのはず、四作目同様に寅さん不在の部屋は下宿人に貸し出しているもんで。「あぁ、そうかい!」とスネて出ていこうとする寅さんでしたが、入れ替わりに入ってきた美人を見るなり手のひらクールクル。
男はつらいよ純情編05
 
 この美人(若尾文子さん。まぁきれいで上品なこと)こそが、とらやの下宿人でした。おばちゃんの「従兄弟の嫁いった先の主人の姪の夕子さん」だそうですが、親戚って言っていいのかってくらいの超・遠縁。なんでも小説家のご主人があんまり売れずに夫婦仲が悪くなり飛び出してきたとか。シリーズ初の人妻マドンナです。
男はつらいよ純情編00
 
 例によって一目惚れの寅さんですが、それを不安でいっぱいの顔で見つめるさくら (´・ω・`)。
 
 
 映画序盤での騒動がないなーと思ってたら、今回は中盤に。タコ社長の工場で働く義弟・博が独立を画策し、北海道の親父さんに独立資金を工面してもらって・・・とか。
男はつらいよ純情編07
「おぉ、博!やるじゃねぇか!なぁに、タコ社長なんざ、俺がうんと言わせてやるぜ!」。いつもの安請け合いで勇んでタコ社長宅に乗り込みますが、社長とは名ばかりの質素な家に何人もの幼子がわーわー騒いでおります。

「寅さん!ちょうどあんたに頼みに行こうとしてたんだ!ウチの博が独立するって言うのを止めてほしいんだよ!」・・・、いつもと違う切羽詰まったタコ社長に気圧される寅さん。
男はつらいよ純情編06

「あいつがいないとウチは倒産だ。この家族も首くくらないといけねぇ。言いたかないけど、北海道から出てきてグレてたあいつをここまでにしたのは俺だと思ってるよ。どうだい、寅さん!?」

 結局どちらにもほだされて何もしない、いやできない寅さんであります。いや、ホントに何にもしないんですよ。ちょっとびっくりしました。
 
 そんなごたごたの中、ちょっと存在感薄めのマドンナ・夕子さんですが、美貌と気品で住み込みで働くとらやの華であります。男性客増える増える。このあたりのド直球な描写は昭和ならでは。
 
 なんでも若い頃は売れたけど今はさっぱりという小説家のダンナさん、その家族等の堅苦しさに辟易していたことに自分でも気づいた夕子さん。それは下町・葛飾ととらやの空気、そして寅さんに触れたことでの気づきなのでしょう。
 
 その気づきは一方で、いつまでもここにいられないことの気づきでもありました (´・ω・`)。
 
 マドンナの気を引きたくて奮闘する寅さんですが、心を入れ替えたダンナさんが迎えに来てあえなく今回も失恋です(´・ω・`)。
「おにいちゃん・・・。夕子さんね、ダンナさんが迎えに来たから帰るのよ」
「帰るって・・・、今?」
「そう、今・・・」

 傷心の寅さん。見送りのさくらと電車を待ちます。そういえば、16歳で葛飾を飛び出したときもさくらが泣いて見送ってくれたっけ・・・。

「さくら!故郷ってのはよぉ・・・」。さくらの巻いてくれた赤いマフラーを首にかけ、何か言いかけた寅さんですが、ドアは閉まります・・・。
男はつらいよ純情編09

 寅さんが去ったとらやに、五島で出会った女が赤ん坊を連れて真人間になった亭主と挨拶にやってきました。故郷・葛飾では失態ばかりの寅さんでしたが、旅の空では男前だったことがとらや面々にも伝わったお正月。そして、五島のおとっつぁんには寅さんの年賀状が届いておりました・・・。


 映画序盤の五島でのエピソード、寅さんめっちゃ男前でした!もうそれだけでいいくらい。森繁久彌さんのまぁリアルなこと、宮本信子さんの幸薄(さちうす)感。なのにシリアスになりきれない寅さんの軽妙さ。いやいや、我らが寅さん実にジェントルでした。

 それにしても今回は、「いつまでも故郷から自立できない俺」みたいな迷いが最初から最後までありました。まぁ結局迷ったままでまた旅の空なのですが。そういえば序盤の五島での父娘、中盤の博とタコ社長ともに「自立」の葛藤でした。ひょっとすると、マドンナ・夕子さんも含めて。

 彼らは摩擦を味わいながらも克服する一方で、マドンナにうつつを抜かしトラブル仲裁も匙を投げちゃった寅さんはまたも自立できずじまいのループ。この先寅さんに成長があるのかはわかりませんが、可愛げでカバーですね(´・ω・`)。

 寅さんは人との垣根が極めて低い人だと思うのですが、その根幹は「共感力」でしょうか。困った人を見ると放っておけないのは、他人事いや他人という概念自体がそもそもないみたい。あー、夕子さんの超・遠縁ぶりに最初は笑ったけど、不自然なほどの遠縁であるおばちゃんに頼ったのは、心情的にはおばちゃんが一番近かったからなのでしょう。

 中でもとりわけ人に近い寅さんとの散策は、こんな人物(そしてとらやの雰囲気)をつくった葛飾の風景を夕子さんも一緒に味わっているようでした。その中での寅さんへのやんわりとした恋愛感情の拒絶。もちろんそれに気づくような寅さんではありませんでしたが。

 寅さん、またフラレちゃったけど相手は世帯持ちだもんね、最初っから少しは覚悟してただろ?えっ?先のことなんてまるで考えてなかった?そのほうが寅さんらしいか(*´ω`*)。

 でも、五島の宿での振る舞いは立派な紳士・騎士・サムライだったよ。あれも寅さんなんだね。今度はあれが惚れた女の前でできたらいいなぁ。次も楽しみにしてるよ、ありがとう(*´ω`*)。

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コメント

非公開コメント

No title

ほんと憎めない男ですね~苦笑
こういう人を人たらしというんでしょうね。

据え膳を食わなかった寅さん。
惚れてまやろ~~~~でしたね。(^_-)-☆

ミコリーさん

ミコリーさん、こんにちは。コメントありがとうございます(*´ω`*)。

現実に身近にいたら結構迷惑な人だと思う(劇中でとらやの人たちも言ってるほど)のですが、喜劇の主人公としては見てて楽しく、時に切ないですよね。落語の登場人物のようです。いや、現代の落語なのかなとも思ったりして。

据え膳食わなかった寅さん、実に男前でした。ダンディズムとは自己抑制。寅さん、やりゃできるじゃん(*´ω`*)。