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TATTOOあり



    夜に咲く花・・・愛しさ     雨に散る恋・・・哀しさ
    Kill Me!  Kill Me!  Kill Me!   Kill Me!   My Sad Heart・・・


    内田裕也の「雨の殺人者」が流れる中、暗い警察病院の通路に運ばれる亡骸。

    その名前は竹田昭夫、30歳。単独での銀行強盗を行い、2日間の籠城で4人を射殺。更に人質に対する人間の尊厳を踏みにじる凶行の末、警察により射殺された。


    竹田は恵まれない環境に育ち、その性格は短気かつ粗暴。わずか15歳で強盗殺人をはたらくも、年齢の関係で2年と待たず出所。大阪に出てヒモ暮らしに。

    唯一の身内である母親は言う。「あん子はええ子なんや。いつかきっと立派な人間になって、周りを見返すんや。・・・30や。30歳にはきっと」


    20歳。保護観察士から「自由」となった彼は、その胸の右に牡丹、左に龍の刺青を入れる。

    胸だけ?

   「怖く見えれば、なんでもええんや!」

    キャリアの乏しい彫り師の半ば練習台として、安くあげる刺青。こけおどしであることを隠さない竹田に鼻白む若い彫り師。


    が、胸元から覗かせる刺青は、彼の自信を支えた。確かに「怖く見えれば、なんでも」よかったのだった。

    粗暴ではあるものの、わずかなカネでもきちんと返す妙な律儀さを持つ男。人を殺めておきながら、約束の重さや人の道を説く男、竹田。

    やがてキャバレーのボーイとして頭角を現し、私生活では美貌の新人ホステス三千代をその同棲相手から奪う。そして新しい店の雇われ店長に抜擢と、風向きは彼に。

    三千代との初めての夜に、彼は誓う。宝物であるオマエをいつまでも離さないと。必ず幸せにすると。


    殺人者である彼は、更生できたのか?

    ・・・否。


    どんな「宝物」も、手に入れば、彼にとってそれは自分の「モノ」。永遠の幸福を約束した三千代ですらも、自分の嗜好、都合を押し付け、いつしか暴力さえ振るうヒモ同然の暮らしに。

    やがて三千代は彼の元を去る。また、ひとりぼっちに。だが、それが自分のせいだとは、どうしても思えない。


    竹田には、彼の考える「男らしさ」があった。ハードボイルド小説の主人公のような。そして、母からの期待に応えたい気持ちも。

    あぁ、もう30歳なのに、何も成し遂げられず、何者にもなり得ていない自分。行き当たりばったりに起業して「社長」を名乗ったけれど、実態はチンピラのまま。何をやってるんだ、俺は。


    雇っていた探偵から、三千代発見の連絡(まだ探してたのか!)。胸の刺青の「怖さ」だけを頼りに踏み込む三千代のアパート。

   「俺は約束を守る。離さないと言っただろ?」

    反故にしたもうひとつの約束を棚上げして迫る復縁。変わらぬ美貌をこわばらせる三千代。・・・が、その前にふらり現れる全裸の男。

    竹田など眼中にないかのような、その振舞い。背中一面を彩る鮮やかな刺青の前に引き下がる竹田。


    雨の中追ってきた三千代に見苦しく復縁を迫り、唇を押し付けるのだが・・・。

   「あの人はあんたとは違って、やる言うたらやる人や。ウチはほんまもんの男が好きなんや!」。竹田の口づけを振り払うように唾棄して立ち去る三千代。敗北感の中、立ちつくす竹田。

    そして、「あの人は」「やる言うたらやる人」だった。神戸の大組織に単身銃口を向けた「あの人」のニュースを知った竹田のプライドは砕ける。行き場の無さを自覚するに至った彼でも為せる「大きなこと」とは・・・・





    その異常さから、今も記憶に残る79年の三菱銀行籠城事件の犯人を描いた作品です。が、あえて犯行に及ぶところで終わる構成は、その残虐さを描くと、誰も犯人の「人間性」への関心を持てなくなるから、だったのでしょうか。

    竹田昭夫、いや梅川昭美は射殺されて当然のことをした、と今も思います。短い苦しみしか与えられなかったのか、とさえ。

    主演、宇崎竜童の大熱演で(素晴らしい!)、あたかもドキュメンタリーのように見てしまうのですが、実際の梅川昭美がどんな人物だったかは、一旦置くこととします。

    この映画の主人公である竹田には、少しだけ身につまされるところがあるもので。


    過剰な男性性の自縛(考え方、体を鍛える、)、その一方での拘りと押し付け。他者への無理解。

    犯罪こそ起こさないものの、こういった点でうまくいってないのは、私も同じだ、と観ていました。

    最後に流れる宇崎竜童の「ハッシャバイ・シーガル」。20歳の頃から今でも聴いてるもんなぁ。

    ♩寂しさを癒すのに、俺は何をすればいい? 潮風の町に来て、飛び立つカモメ見つめている。   眠りたい、ぐっすりと。惨めさを通り越し、安らぎの場所を探す俺さ・・・♩


    他者への敬意と自省なくして、人は生きられないと思っています。

    全ての理不尽な死を強要された人たちに、合掌。
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コメント

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No title

homeさん、このあらすじって、homeさんが書いたのよね?
ヤッダー!感激したわ
すんごくわかりやすいし、観たいなって思わせる文章よ。これって。
映画のレビュー読むの好きなの。
お気に入りのレビュワーさんもいる。
もちろん素人さんだけども。

いやいや、ちょっと私ホントに感動したわ(笑)

No title

あきらさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

いやー、ちょっと気恥ずかしいです。失礼しました。

私は、全然映画ファンとかじゃなくて、知識もほとんどありません。私にとって面白いかどうか、のみっす。

だから、見たものも忘れちゃうことが少なくないのですが、後で自分が見たくなるように書いてました。

だから、そんな風に言っていただけたら、すごくうれしいです。ありがとうございました。

他のページに「ナイス」をくださったのも、あきらさんでしょうか?ありがとうございました。

No title

内緒さん、こんにちは。コメントありがとうございます。

もう35年くらい前の映画でしょうか。もちろん古いのですが、ギラギラした昭和の感じ、悪くありませんですよ。広島市内のレンタル店でたまに置いてあったりします。

No title

homeさんの解説読んでる途中から、あ~この主人公に自分を重ねてるんだな~っていうのが伝わってきました
「男らしさ」ってなんなんでしょうね
生まれた瞬間から、ある種押しつけられてきたもののような
ま、そんなこと言ったら「女らしさ」も押しつけですね
ジェンダーフリーが進む現在とはギャップは開くばかり。
いまはのびのびしてていいな~って思います

No title

Kyalaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

お見通しですね(笑)。全くそうなんです。今、思い出しましたが、中学校出る時に、担任だったきれいな女性教師が「homeくんは学年で一番、じぶんを男だって意識してる子でした」って言ってたって、母親から聞かされたっけ。恥ずかしい男の子だったんだなぁ、今でも

No title

2013/11/20(水) 午後 11:42の内緒さん、こんにちは。コメントありがとうございます。

どうしてこうなっちゃったんでしょう(笑)。でも、好きでやってるんでしょうね。

一緒に一杯やりたいなぁ。