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気狂いピエロ


 
 ・・・多分、僕は立ったまま夢を見ている。
 
 人類は今や二重人間の時代に突入した。自分で自分と話すのに、鏡はいらない。・・・一人で話せる。
 
 マリアンヌが「快晴よ」と言う時、何を考えているか。
 
 彼女はそれしか考えていない。
 
 彼女が「快晴よ」と言えば快晴なのだ。理由の必要なく快晴なのだ。
 
 僕らは夢で出来ている。夢は僕らで出来ている。
 
 愛しき人よ、快晴だ。夢では言葉も死も美しく快晴だ。
 
 愛しき人よ、快晴だ。人生は快晴だ。
(主人公の独白より)
 

妻子あるフェルディナン(30代半ば?)は、思索を愛する元国語教師。今はテレビの仕事も打ち切られ、裕福な生まれの妻のおかげで不自由ない暮らしをしているが、「稼ぐ」という俗なセカイに馴染めずにいた。
 
 ある晩再会した、かつての恋人マリアンヌ(10歳ほど年下?)。魅力的だが、奔放で謎めく女性。「兄」と称する男性も含め、オトコや暴力、犯罪と関わっている様子。
 
 マリアンヌのアパートで過ごした翌朝。
 
 華やかな彼女におよそ似つかわしくない殺風景な部屋には、いくつもの銃器。隠された法外な札束。そして首を切り裂かれた見知らぬ男の死体・・・。
 
 訪ねてきた(恐らく、現情夫の)男を鈍器で襲い、二人は日常から逃げ出す旅に。
 
 勇ましくハンドルを握り、チープな強盗で立ち回るフェルディナン。しかし、マリアンヌは彼を「ピエロ」としか呼ばない。それは最後まで。
 
 行き当たりばったりで観念的な旅(服装も変わり、意味もなく川を徒歩で渡り、砂の中で眠る等々・・・)は、海辺に辿りつく。
 
 本ばかり読み、結局何も成さない男。苛立ちを募らせる女。「私、何ができる? 何をしたらいい?」

「あなたは言葉ばかり」
「君は思想がない。感情だけだ」
「思想は感情に宿ると言うわ」
「じゃあ、本気で会話してみよう。愛するものは?したいことは? ・・・君からだ」
「・・・花。動物。・・・わからない。すべてよ。あなたは?」
「・・・野望。偶然。・・・わからない。すべてだ」
「・・・5年前と同じよ。わかりあえないわ・・・」 深いため息の女。
 
 マリアンヌは「生きる」ことを望み、彼女の「日常」に戻る。「生きる」は、ダンス、音楽、素敵なホテル、食事、バカンス。そして「日常」は・・・犯罪。「兄」の影がちらつく。
 
 一人になったフェルディナンは、彼女からのSOS(嘘)を受け、慣れない暴力社会に飛び込みリンチを受ける。絶望し、線路に身を横たえながらも死ぬこともできない。ピエロ。
 
 ピエロがリンチを受けている間に大金をせしめたマリアンヌは「兄」とボートで島の別荘へ。フランスの陽光の中、キスを交わしながら。
 
 追うフェルディナン。拳銃の打ち合いを制し(できるじゃん!)、恋敵の「兄」を殺し、そして、愛しいマリアンヌまでも。
 
 横たわるマリアンヌは「ごめんね、ピエロ」と、絶命。
 
 四方を囲む青い青い海。その色のペンキを顔に塗りたくり、ふらふらとダイナマイトの束を顔に巻き、導火線に火をつけるピエロ。
 
「クソっ!こんな死が・・・!!」
 後悔に費やせる時間はほんの一瞬。爆音と火柱は一瞬上がり、すぐに止んでしまった。

「見つかった」
「何が?」
「永遠が」
「海と溶け合う太陽が」
 海を背景に二人の囁きがこだましていた。



ついつい全部書いてしまいましたが、それは意味をなさない不条理な映画のような気がします。
 
 初めて見たのは19歳の時。もちろん意味はわからず、マリアンヌの美しさと、行き当たりばったりで結局破滅、がなんとなくその頃の気分に合っていたのが印象に。
 
 あれから30年近く経ちますが、男女のわかりあえなさが身につまされるくらいで、今も意味がわかっているのやら。
 
ただ、このいきあたりばったりさと、救いのないラストが一層切なく感じます。現実ではなくても、こういった経緯と終末がリアルに感じられて。
 
 私もまた、ピエロだ。
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