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ポンヌフの恋人



    アレックスはホームレスです。 

    20代半ば?の若さながら、いつ死んでもいいような自堕落さ。実際、酔っ払って道路に横たわり、左脚を轢かれたりして。

    彼は誰にも心を開きません。ホームレスを救済する施設(?)の男性からの親切な呼びかけにも応えず、頑なに寝ぐらと定めているポンヌフ橋に今夜も帰ります。

    ポンヌフ橋。

    重厚なつくりのその橋は、歴史もあってか現在は約3年の修復工事中。誰も渡れないその橋の一角が、彼の棲み家。

    彼は何も持っていません。食べ物は市場からくすね、カネがいるときは口に油を含んで派手に火を噴いてみせる大道芸をする程度。

    不眠症の彼は、時間すら知らないのでしょうか。ポンヌフ橋のもう一人のホームレス、老いたハンスから恵んでもらう無味無臭の睡眠薬の世話にならないと、昨日と今日を区切ることすらもできず。

    決して離れようとしないこの橋だって、時が来れば追い立てられることはわかっているはずなのに。

    アレックス。人の形をしてはいますが、その姿は野良犬そのもの。一体、言語を解することすらできるのか、知性さえ疑わしく、可愛げもなく。


    そんな彼の「家」に、闖入者が現れます。

    大きなスケッチの束を抱えた女、ミシェル。ホームレス、ではない、いや、少なくとも最近まではどこかに帰るところがあったのでしょう。まだ、ある程度は身ぎれいで、左眼を大きな絆創膏で覆っているのは何の理由なのか。

    もちろん、アレックスの寝ぐらに現れたのは偶然です。どこでもよかった。どこにも行くところはないのですから。

    もうひとつの偶然。彼女のスケッチの一枚にあったアレックスの顔。左脚を轢かれて気絶した彼の顔を描いたものです。

    誰かが、自分を・・・描いた。昨日も今日も、恐らく今すらない彼を。自分ですら関心のない自分を他者の眼が描いた「自分」。初めて他者の眼を通して見た「自分」。

    同世代の女性であることも手伝ってか、アレックスは他者・ミシェルへの関心を持ち始めますが、彼女は決して自分のことを語りません。アレックスが知るのは、眼を患っていることと、(眠る彼女のカバンにあった手紙を盗み見て)どうやらチェロ弾きの男との恋に破れたらしいこと、だけ

    初めて、恐らく初めて他者のために街を歩きます。彼女に食べさせるための魚をくすね、彼女が探しているらしい(=彼女がポンヌフから去る契機になりそうな)チェロ弾きを追い払い。


    やがて、愛し合いはじめる二人。おずおずと抱き合い、名前を呼び合い、夏が終わる橋の上で抱き合って眠りながら。

    ひとりぼっちから、ふたりきりに。


    ミシェルはアレックスに教えます。眠り方を。昨日と今日の区切りを。いらなくなった睡眠薬を使っての昏睡強盗(!)で、明日のためのカネを稼ぐことを。橋を去って、屋根のある家に住む暮らしを描くことも。

    だけど、それに馴染めないアレックス。明日を考えることは、惨めな今の自分を否定し変わっていくこと。それを受け入れたくない彼。彼の望みは、いつまでもポンヌフの橋の上で、ミシェルと永遠に今日を繰り返すことなのに。

    ミシェルの眼は日に日に悪くなっていきます。絵描きを志していた(と思われる)彼女から光が奪われることは、彼女が夢見ていたであろう未来を諦めること。一方で、アレックスから去らない可能性をもたらすこと。

    「私の盲導犬になってくれる?」
・・・犬のマネをしてミシェルを笑わせるアレックス。彼女は永遠に自分のそばに・・・。



    それはアレックスの身勝手な妄想。 ホームレスとなった今とは違う、いいとこのお嬢さん風のミシェルの顔のポスターが、パリ中に貼られはじめます。地下鉄の通路、街角の壁一面に。それは、不治と思われた眼病が治る見込みができたことと、帰宅を促すメッセージ。ホームレスのミシェルは、明るい未来の保証された幸福なお尋ね者に。

    街中のポスターを破り、火を放つアレックス。しかし、そのメッセージはミシェルの知るところとなり・・・。






    昔、何かで「不遇な恋人が、本来そうなるべきだった幸せを得るチャンスが来た時、そうさせまいとして、彼女の目に触れさせまいとポスターを破り続ける絶望的な試みをする男」の映画があるってことで、名前だけ憶えてました。で、たまたまレンタルDVD半額デーで借りた次第です。

    えー、ホントに正直な話。・・・よくわかりませんでした

    こうして書いてみて初めて、あぁ切ないお話なんだなぁ、とぼんやり思い始めたほど。


    本当に真面目な話、ホントに自分はわからずやで(女性からは特に)ダメなヤツなんだなぁって思います。

    なんだか、ちょっと凹んでしまいました。



   わずか150円払って。
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コメント

非公開コメント

No title

懐かしい。
せつない花火。

ジュリエット・ビノシュを失ってからのレオス・カラックスの作品は精彩を欠いてるよね。

No title

あきらさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

ジュリエットさんって、ミシェル役の美人さんですね。重用していた女優さんと別れてから精彩を欠く映画監督さんって、少なくないみたいですね。

これ以前の映画、見てみようかな。そうしましょうそうします。

それにしても、あの花火のシーン。あと先考えてなさがめっちゃ出てましたね。その後に帰る、橋のうら寂しさといい。
※画像は、花火の入ったヤツを選びました。あのシーンが素敵だったので。

No title

私もよくわからなかった映画なので、なんか(^▽^) ホッ
「よくわからん」が強烈な印象の映画でした。なのになぜ「名作」と謳われてるのかな?って、正直。
フランス映画観てると、どうしてここでキレるの?ってところで役者さんがキレてたりしませんか?これは国民性の違いなのかしら?

No title

kyalaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

あ、よかった。私だけじゃなかったんだ(安堵)。なんちゅうか、登場人物にうまく共感できなくて、「よくわからん」感が残っちゃいました。わけわからん映画は他にもたくさんあるんですが、わからんなりにも好きだったりするのもあるので、映画同様、見てる側もよくわからんですわ(笑)。

まぁ、日本映画でもわけわからん登場人物って、いますからねー。次は、若大将シリーズ見て笑おうかしら。