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惑星ソラリス



「ロケットで外に飛ばしてしまうとは、派手なことをしたな(微笑)」
「・・・あれは・・・何だ?」
「・・・この惑星、ソラリスの海は思考する生命体なのだ。我々の頭脳から記憶の一部を取り出し、実体化させる。君のところには、誰が来た?」
「・・・10年前に、死んだ妻だ。   彼女は又、来るのか?」
「理論的には無限だ」
「・・・」



    数十年前に発見されながら、探索者たちの多くが精神に変調を来たす(上層部は「幻覚」と黙殺している)ために全く開発の進まない惑星「ソラリス」。

   40歳前後と思しき心理学者クリスは、開発計画継続の判断という使命を帯び、単身ソラリス軌道上の宇宙ステーションに赴きます。

   現在ステーションにいる者は、わずか3名の科学者のみ。ソラリスの「海」が思考能力を有し、人類を拒んでいるという「仮説」を信じる立場。他者に非寛容で冷徹なクリスはそんな「仮説」を信じず、彼らを内心嘲っているようです。


  到着したそこは雑然として廃アパートのよう。乗員たちも含めてまともな状態ではありませんでした。

・最年長の電子工学者スナウト→何か怯えた様子。まともに話そうともしない
・クリスの同僚だった物理学者ギバリャン→部屋に閉じこもった挙句服毒自殺
・生物学者サルトリウス→絶対部屋に入れてくれない
・いないはずの誰かがいる→青い服の少女が時折うろつき、サルトリウスの部屋から一瞬フリークスもどきの何者かが姿を見せる

    一体どうなってるのか。手がかりを得ようと死んだギバリャンの部屋に行くと、自分に宛てたビデオメッセージを発見しました。

   注射器を手に、恐らく自殺直前のギバリャン。なぜかそこにも少女の姿が。「いずれ君にも起こる。これは・・・良心の問題なのだ」

   混乱し、疲れたクリスが目覚めた時、部屋に座っていたのは・・・。10年前に自殺させてしまった妻、ハリー。記憶を失くしたかのように虚ろに、しかし自然に。その腕には、自ら毒物を注射した跡さえも(きちんと)あって。幻覚では、ない。しかし・・・?
   
   狼狽しながらも、妻の姿をした得体の知れないモノをロケットに乗せ、宇宙に放逐します。もう、到着時の自信に満ちたクリスではありません。ロケットの下に残ったまま発射ブースに自らを閉じ込めるという、普段なら絶対にしない初歩的なミスをしでかし、火傷を負って気絶してしまいます。

 
   目覚めたクリスはスナウトから、妻の姿をした何者かについて教わります。本来いるはずのない者たちは、それなのか。確かに見た、触れた。だが、惑星がつくったにしても、あまりにリアルだった「妻」・・・。

   再び目覚めたクリスの部屋には、またもハリー、いやハリーの姿をした何かが。

   それはどう見てもハリー。かつて愛し、ほんの行き違いで「愛されてない」と感じさせてしまい、自殺にまで至らしめてしまった女。どんなに悔やんでも、もう二度と会うことの叶わない女。

   それと同じ姿が今、そこに。そして自分への愛情とともに。

   冷血漢クリスは、ハリーに似た何かに両手を広げます。そして、抱きしめてベッドへ・・・。


   クリスはもはや、ソラリス計画を云々する能力を失くしていました。「それ」は「ハリーに似た何か」ではなく、もうハリーそのもの。たとえ、彼女がクリスの名を呼びながら金属製の扉を素手で切り裂いて血まみれで現れても。その傷が見る間に治癒されても。科学者であるクリス自ら分析した彼女の血液が、この世のものでなくとも。

   ここにいるのは人間だ。女だ。そして、俺の妻なんだ。俺を愛し、姿も声も、瞳も香りもハリーであるこの女が、ハリーでなくて誰だと言うんだ? もちろん物理的な複製、精巧なニセモノだなんて知ってるさ。俺だって科学者だ。だが、この正気ではいられない場所での心の支えなんだ。

   あぁ、それはひょっとすると、ハリーがこの世を去ってから空っぽになったままの心の支えなのかも。

    
   かつて嘲っていたスナウト、サルトリウスは、クリスより遥かに科学者でした。彼らの目からは、ハリーは妻どころか、人間ですらありません。もっとも、ソラリスが送り込んできたものと感情的に触れ合えたのがクリスだけ(?)だったからというだけのことかも。ソラリスがクリスを選んだのかどうかは、わかりませんが。

  彼らが着目したのは、ハリーがどんどん人間に近づいていること。ハリーは感情を持ち、、眠ることを覚え、彼らと人間について議論を交わすに至ります。「私は人間になります」とさえ言い切って。

   このクリスという男に対するソラリスの反応は、これまでと違うのではないか? 彼の脳波を送ることで、ソラリスに我々人類の意思を伝え、この局面を打開出来るのではないか?

  ハリーは「人間になり始めている」のでした。彼女とて、自分が複製であることは知っています。クリスに愛情を抱きながらも、自らの記憶を持たない孤独の中で。

   クリスはハリーに語ります。10年前の出来事を。

   クリスはハリーに見せます。幼いころの自分と家族を写したフィルムを。厳格な父、遠巻きに見守る愛情の記憶に乏しい母を。ひとり、異邦人のように佇むハリーを。


  「学習」し、「本物」になっていくハリー。それはやがて本物のハリーが言ったであろう、クリスをなじる言葉を口にし、あまつさえ本物同様に自殺するまでに。

   しかして生き返るハリー。「愛してるなんて嘘!こんな私が嫌なんでしょ!」それは「本物の」ハリーが蘇生したら言ったに違いないであろう言葉でしょうか。


   これが、ギバリャンの言っていた「良心の問題」なのか?  なぜ俺は、俺たちはここにいるのか?  この「海」は何をさせたいのか?

   ソラリスの海は、次第にその色を変えていきます。感情があるかのように・・・。





   ソ連製の名作SFだそうですが、20年くらい前に見たとき、さっぱりわかりませんでした。いや、だからって、今見てわかってんのかって言われても困るくらい、説明の少ない映画なんで、です。

   上にあらすじ書きましたが、「私にはこう見えた」ってだけで。

   でも映画でも音楽でも何でも、世に出ちゃったらもう受け手の取り方次第じゃないかって思ってるので平気っす。

   お話は、「問題を抱えた主人公が、人間性を持った人間じゃないものに愛情を感じて更に悩んだ果てに・・・」的なやつ。この映画以外にも、そういうのは少なくないですが、主人公が他の惑星(ありえんことも平気で起きる)にいるって設定と、説明がほとんどないから、見る側であれこれ解釈するしかありません。

   面白かったかどうかって言うと、面白かったです。音楽は物悲しく、絵はキレイ。で、ハリー役の女優さんはめっちゃキレイだし。

   しかし、この映画3時間近くあるんですよ。その上、わざとじゃないかって思うほど、遅くて長いテンポ。見てるうちに、こっちも退屈な(刺激に乏しいという意味では全くないのですが)空間でイヤイヤ過ごさせられてるみたいな気分になってきます。BGMもほとんどないし。

   えらそうに書いてますが、実はよくわからなかったので、2度見ました。だいたい6時間。とはー。ハリー登場の後半に限っていえば6度。全部で11時間は見るだけで使ったのか。だって、さっぱりわかんないんですから。

   何度も見てるうちにこんな見方になってきました。
①男ばかりの職場の話(何かの遠征隊とか)なのに、主人公のおっさんだけが、どういうわけか家族と一緒に参加することになってしまい、仕事だけで来ている同僚たちと噛み合わなくなる話。
②悩むおっさんが、飲み屋で昔の奥さんそっくりのお姉さんと、子供の頃の話しまで受け止めてくれたママさんに親切にしてもらえた話。

   見てから数日経った今、やっぱ②かなって感じを強めております。ラストシーンなんて、もう酔いつぶれてママさんにアタマ撫でてもらってるように見えて見えて。

   映画そのものは、何でも思い通りにしようとしてさっぱりうまくいかない主人公のおっさん視点です。ひどいと言えば、ホントひどい話ですわ、これ。

 誰かの都合で呼ばれてきて、何の脈絡もバックグラウンドも将来の見通しもないハリーさんの視点で描いたとしたら、全く別もんになったでしょう。

   そういうのも見てみたいなぁ。


   見た人により解釈は異なるのでしょう。同じ人でもいつ見るかで異なるのでしょう。今回は、(できるだけ)ハッピーな解釈をしました。陰鬱な画面ですが、それができるお話だと信じて。

   それにしても、ハリー役の女優さんがものすごくキレイ♩ うっとり♩
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コメント

非公開コメント

No title

リメイク版はわかりやすくなってるかも。
観たかな?
あの人。
ほれ。あの人よ… ←出てこない。
唇の薄い!

タルコフスキーの作品は基本的に鬱々と進むよね。
嫌いではないけれど。

リメイクは確か批評家に滅多刺しにされてた(笑)
主演のあの人がそもそも役にそぐわないとかなんとか…。
誰だっけ!!!

No title

ジョージ・クルーニー(笑)

No title

あきらさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

リメイク版は、見ないようにしてたんですよ。アメリカのそれなら、きっとわかりやすくなってて、出来の良し悪しにかかわらず、一度見たらもうオリジナルが見られなくなりそうで。
近所のビデオ屋さんには、リメイク版はあってもオリジナルがないので、何年もガマンしてました。そしたら、この年末に置いてあったんで速攻レンタルしましたわ。

タルコフスキーさんって、「サクリファイス」ってのをこれまた20年くらい前に見ましたが、あれもわかんなかったなぁ。今見たら、何か書けるかな。

No title

ジョージ・クルーニーって、いかにも伊達男然ってしてて、あんまりこういうことで悩みそうにないですもんね。オリジナル版の主人公さんは、お世辞にもイケメンじゃないですが、なんでも脇役専門の人だったとか。やっぱ、アメリカは興行!だから、お話が地味な分、派手な名前がいるのかしら。

No title

NHK Eテレでソラリスの解説を4週連続でしてましたよ。
今日は最終回の再放送w

それによるとソラリスのハリーは主人公の記憶の中の美化された理想の女性だそうです。
主人公の記憶にないものは実体化されませんし

この映画は大好きで個人的には理屈はどうでもよくて
バッハの音楽と映像の美しさだけで満足です。

No title

本家鮫チャンさん、はじめまして。コメントありがとうございます。

やってましたね、Eテレで。「ソラリスの陽のもとに」。

美しい映像、そしてハリー役の女優さん(笑)。映画館で見てみたいです。テレビ画面でしか見たことないもので(´・ω・`)。